1. Somo La Kwanza -Nakupenda > 8:31
几帳面にビートを刻なカリンバ。
その間を「たゆたうように、つぶやきのようなプリミティヴなアフリカン・ハープの印象的なリフ。
執拗に繰り返される同じ音列の分散和音。
アフリカ起源の弦楽器に独特の伸ばしたコイルを使用した弦は、特徴的なサステイン・サウンドとチープながら奥行きのある音色を生み出す。
呪文のような男声のリードに論されるように、女声コーラスが呼応する。
続いて「二人は一人ではない」と全員でコーラス。ゆったりと大きなビートの中に細かな音たちがうごめき、愛についてのスワヒリ語の哲学的な言葉がちりばめられる。
アフリカの渇いた大地の闇の広がりを感じつつ、焚き火の側で長老に聴かされる歌のよう。
NIENZI NIKUENZI TUYADUMISHE MAPENZI
お互いを大事にして、愛し合っていこう
NINAONA RAHA MOYOWANGU KUPENDWA NA WEWE
あなたに愛されて、心から幸せ
MUNGU AKUPE BARAKA NAMIE NIFURAHI
神さまがあなたを祝福してくだされば
私は幸せよ
MUNGU ATUPE FURAHA NA
MAISHA MEMA
神様、私たちに幸せと良い生活を
お与えください。
Wawili si mmoja
二人は一人ではない
2. Somo La Mbili -Kidogo kidogo >5:54
美しいバロック風な西洋音階に調律されたカリンバが示す新しいカリンバ・ミュージックの地平。
グルーヴィなカホンやシェイカー、印象的なやや古めかしいエレクトリックピアノの音色やコーラスと相俟って、フージョンのようでも、教会音楽のようでもあり、スケールの大きな楽曲に仕上がっている。
「少しずつ、少しずつ」「すべてを望むものはすべてを失う」とまるで戒めの言葉を刷り込むかのように繰り返し繰り返し歌われるスワヒリ語が耳に残る。
いにしえの面影をたたえる苔むした遺跡の内部を一歩一歩踏みしめながら歩くかのような緊張感と凛とした空気、対照的に火照る身体、迸る情熱。シンプルなリフのせめぎ合いの中に、劇的な展明を秘めつつ、やがて唐突に終焉を迎える。
Tulia tulia utakalo utalipata
クールでいれば、ほしいものが手に入る
Kupata kuna Mungu ukikosa shukuru
手に入ることは神の思し召し、
得られなくても感謝しなきゃ
BORA RADHI KULIKO MALI
リアルな富よりココロの富を
Mtaka yote hukosa yote
すべてを望むものはすべてを失う
Mtaka yote hukosa yote
すべてを望むものはすべてを失う
kidogo kidogo kidogo kidogo kidogo kidogo
少しずつ少しずつ
kidogo kidogo kidogo kidogo kidogo kidogo
少しずつ少しずつ
Mtaka yote hukosa yote
すべてを望むものはすべてを失う
Mtaka yote hukosa yote
すべてを望むものはすべてを失う
3. Somo La Tatu -Paka na Panya >4:34
「ネコが居なくなれば、ネズミがはびこる」と歌い始めるお祭りのこの曲、にぎやかで楽しげな音色は、缶のフタやピンなど、楽器以外の音も入り乱れている。
さびれた金属音で魅力的な旋律を奏でているのは、アルミニウム製のカリンバ。
ふぞろいなジングルがたくさんついたエジプトのタシバリン=レクやアフリカの木琴など、特徴的な音色の楽器がたくさん使用されて、このサウンドが出来上がっている。
ネコとネズミにまつわる、スワヒリ語のことわざや格言がいくつか集められて、寓話のような歌詞がつくられている。
Paka akiondoka panya hutawala
ネコがいなくなれはネズミが甦る。
Paka akiwa hakimu panya hawezi kushinda kesi
ネコが裁判官ならネズミは勝訴できない。
Paka hashibi kwa wali matilabaye ni panya
ネコはご飯では満腹しない、
ご馳走はネスミだから、
Ziba mwanya usipite panya
ネズミが通らないように隙間を塞げ
Paka akiondoka panya hutawala
ネコかいなくなればネスミが蔓延る。
4. Somo la Nne -Bandu Bandu >10:13
カリンバや竹と木でつくられた親指ピアノ=サンザ、伸ばしたコイルを使用したタイの弦楽器 =セン、ヴィブラフォンの音色のキーボード、などが醸し出す不思議なアンサンブルに思わず耳を奪われる。
ノイズのようでもあり、グルーヴを生み出すパーカッシヴな存在のようでもあり、音の洪水でありながら、お互いが有機的につながって唯一無二の環境をつくりだしていく。
熱帯の生命力に満ちたジャングルの奥地に足を踏み入れたかのような感覚に似ているだろうか、少しずつ積み重ねていくこと、決して急ぐのではなくコツコツと成し遂げることの尊さを説くスワヒリ語の動詞が、かけ声のように織り返される。
Bandu bandu humaliza gogo
切り刻んでいけば大木も倒せるさ
Bandu bandu humaliza gogo
切り刻んでいけば大木も倒せるさ
Gonga gogo usikie milo
丸太をいて音を聞け
Gonga gogo usikle mlio
丸太をいて音を聞け
Haraka haraka haina baraka
急がば回れ
Kenda ni karibu na kumi
9は10の近く
(終わりが見えているから、頑張れという意味)
5. Somo La Tano -Zawadi > 7:53
サンザやカホン、シェイカーの乾いたサウンドにのせて、オープンチューニング ギターが、ブルージーで艶のあるフレーズを奏でていく、アフリカン・ブルースのスタイルの美しい曲。
英語とスワヒリ語の入り交じった歌では、母が息子に、スワヒリのことわざを伝えて行く形式がとられている。
いずこの国もこうした次世代に伝えられていく言葉というのは、同じようなニュアンスのもので、年月を経た重みや人間の真実を的確に伝えるものなのだな、と納得。レコーディングでは、実際に母が息子を前に歌っているものを採用した。
One day mom told her son
listen, those words are so precious
They will give you the power for living your life,
indeed son,
Waswahili wanasema; スワヒリ人はかく語りき
JIRANI PIA NI NDUGU YAKO
隣人もあなたの兄弟と思いなさい
Heshima kitu cha bure, Heshima kitu cha bure
人を敬う気持ちはタダ。
YEY YEY IYERAHAIHO OH O O YEEEH
Waswahili wanasema; スワヒリ人はかく語りき
Kila ndege huruka kwa ubawa wake
どちらの鳥も自らの羽で飛ぶ
KUINAMAKO NDIKO KUINUKAKO
かがみ込む場所こそ、立ち上がる場所
Waswahili wanasema; スワヒリ人はかく語りき
Aombaye magadi awe na kigae chake
塩を乞うものは壺のかけらを持っておけ
(求めるなら備えが大事)
Eleza haja upate haja Eleza haja upate haja
説明して、手に入れよ
(求めよ、さらば与えられん)
YEY YEY IYERAHAIHO OH O O YEEEH
6. Somo La Sita Kwaheri > 4:30
カリンバの素朴な音色にブロックコードのピアノが重なるサウンドが新鮮に響く。
プリミティブなアフリカの楽器と平均律で調律されたピアノとは合わせにくく、音楽としても溶け合いにくいものたが、テンションコードを使用することや、単音の多用など、工夫が凝らされていることで相乗効果を生み出している。
『クワヘリ』とは、スワヒリ語で主に別れ際に使われる言葉。さようならも、ごきげんようも、おやすみも、みんなクワヘリ。
ここでは養子として育てた子供たちが『ママ、おやすみ』と寝床に向かう様を歌っている。
伸びやかなハーモニーが無邪気な子供たちのおやすみ、を想起させる。
Penzi la mama tamu (Penzi la mama tamu)
ママの愛はとても甘く
HAKUNA KAMA MAMA (HAKUNA KAMA MAMA)
ママに勝るものはない
HAKUNA HOJA MAMA NI
MWALIMU NAMBA MOJA
だいじょうぶ、ママが一番の先生さ
MAMA NI MAMA ママはママ
MAMAMLEZI KANILEA
KWA MAPENZI (KWA MAPENZI)
育てのママは愛をもって私を育ててくれた
Kwaheri Mama おやすみ ママ
mama Kwaheri ママ おやすみ
the Afrothumbs【アフロサムズ】
母なる大地アフリカのサウンドやビート、
空気感や人々の営みにインスピレーションの源を得て、
カリンバ(親指ピアノ)を中心としたアフリカ起源の
プリミティヴな楽器たちが生み出すシンプルで力強いサウンドと
西洋楽器のモダンなフレーバーの融合を試みる、 異種格闘技バンド。
全曲、セッション・コンポージングによるオリジナル。
インプロビゼーションの醍醐味を追求する、
ジャズ寄りのワールドミュージックとして積極的に展開中。
シーズン1は、 日本のアフリカ音楽の草分け、
カリンバ&パーカッション奏者スズキ キヨシを中心に据え、
カリンバ・サウンドの多様性を表現。
Kiyoshi SUZUKI [Kalimba, Sanza, Percussion]
Kuni KUROSAWA [Harp, Keyboard, Sen, Guitar, etc.]
Masao NAKAMOTO [Kalimba, Cajon, Shaker, etc.]
品番 iota-024
配信開始日 2020.07.22
収録曲数 全6曲
収録時間 44:31
▶︎動画 全曲視聴
ライター 黒澤邦彦(tacto rustico label/Founder, Musician)
黒澤邦彦(中世音楽家、民族楽器演奏家、作・編曲家、プロデューサー)
30年以上にわたる中世ヨーロッパ音楽家としてのキャリアに裏打ちされたマルチ・インストゥルメンタリスト。管弦打楽器をさまざまに操り、ブラジル音楽、ケルト音楽、アラブ音楽、アフリカンゴスペル、など多岐にわたる分野で活動中。
これまでに『AEORUS』『NRP Records』両レーベルから計7枚のリーダーアルバムを発表したほか、Final Fantasy IXの音楽制作などにも携わる。鎌倉を拠点とする極私的レーベル『tacto rustico』にて異なるジャンルの24枚のアルバムをリリース。
【鎌倉の街からワールドミュージック】
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【studio iota label】
日本の音楽レーベルstudio iota labelではCDの制作・販売、WEBコンテンツの発信、企業のWebライティング、動画BGM製作、アーティストやお店などの写真撮影、作曲・編曲事業、レコーディング・ミックス事業などを行っています。
【ウェブサイト】http://studio-iota.com/
【Facebookページ】https://web.facebook.com/iotabi
【note】https://note.mu/nagareruiota