前作Quiet Vibesがインドア系とすると、Natural Livesはアウトドア系。
収録曲はどこか懐かしいスコットランドやアイルランドのバラード・フォークソングなど。
個性的な4人のメンバーによるムーンノーツのオーガニックなサウンドとグルーブが心地良いバンドサウンドに仕上がっています。
1. Scarborough Fair > 4:38
[15c. Scottish Ballad ]
サイモン&ガーファンクルの演奏で、世界的にも有名になったこの美しいメロディと深遠な詩をもつバラッドは、古くから口伝で歌い継がれて来たスコットランド、イングランド一帯を起源とする伝統曲。
詩は19世紀にF.J.チャイルドによって編纂された『Child Ballads』にも収録されている”the Elfin Knight”というバラッドに基づくとされている。
一方、曲は中世イギリスの典型的なスタイルを持つ。
これらのことから、曲と詩はそれぞれ別々に形成され、口伝されたものがある時期に一体化したもの、と推測されている。
リフレインで歌われる「パセリ、セイジ、ローズマリー、タイム」はいずれもハーブだが、これらを調合することで堕胎の薬になるとも、媚薬になるともいわれる。
ジャジーなアレンジながら、マンドーラ、ゲムスホルンといった中世ヨーロッパの楽器を交え、独特の世界観を描き出している。
2. Leaving of Liverpool > 3:24
[19c. Sea Shanty ]
新しい船旅への想いと別れを余儀なくされる故郷や愛する者への哀愁がともに描かれているこの曲は、船乗りの作業歌として古く15世紀に興り、20世紀初頭まで盛んにつくられたシー・シャンティと呼ばれるジャンルの代表曲として知られている。
シー・シャンティは、シャンティマンと呼ばれる先導役の歌い手とその他の人々とのコール&レスポンスがひとつの特徴である。
歌詞中には、1860~1874年にかけてサンフランシスコ~ニューヨーク間を100日余で航行していたデイビー・クロケット号のバージェス船長が登場するが、1880年前後にニューヨークの船乗りがある晩、リヴァプールから来た男に教わったものが、後世に伝わったとされている。
アイルランドのコーラス・グループやバンドになぜか人気の高い曲だ。
3. Wild Mountain Thyme > 3:32
[Irish Folk Song ]
「少女よ行きなさい、そして私たちも皆で行こう、辺り一面花咲くヒースの茂みの中、野生のマウンテン・タイムを摘みに」というコーラスが印象的な、いかにもアイルランドの牧歌的な空気感に満ちたこの曲は、アイリッシュ・トラッドと解される場合もあるが、公式には1957年にこの歌を初録音したF.マクピークという人物が著作権を保持しているとされる。
もっともこの曲もしくは歌詞自体は、18世紀につくられた「the Braes of Balquhidder」の、いわば焼き直しである。
過去には多くのミュージシャンによって演奏されてきた名曲である。
かすれた音色の木製のアイリッシュ・ホイッスルと女声コーラスが歌詞に描かれた柔らかく幻想的な世界を描き出す。
4. Down by the Salley > 4:18
[Old Irish Song ]
アイルランドが生んだ偉大なる詩人・イェーツの作詞によるもの、としてよく知られたこの曲は、もともとスライゴーのある農婦がよく口ずさんでいた伝統歌を基に、イェーツが作り上げたものとされる。
ひとりの少年の片思いの純愛を描いたこの歌詞は当初、メロディのない詩として発表されたが、1909年にH.ヒューズなる人物が「the Maids of Mourne Shore」という古いアイルランドの旋律とセットにしたことで、世界的に大きな広がりを見せることになる。
後には、R.クラーク、J.アイルランド、B.ブリテンといった英国の作曲家たちが、この詩に曲を付したが、結局ヒューズ版が今日もっとも定着しているといって過言ではない。
マリアンヌ・フェイスフルをはじめとして、数多くの幅広い音楽家が録音を残している。
5. the Water is Wide > 2:24
[17c. Scottish/English Folk Song ]
400年の時を超えて歌い継がれて来た名曲は、今日もなおボブ・ディラン、ジョーン・バエズ、エンヤ、ジェイムズ・テイラー、ピート・シーガー、カーラ・ボノフら多くの人気歌手たちによってレコーディングされるなど、人々の心に生き続けている。
シンプルな旋律にのせて、愛の真理が語られる内容はまさに時代や国籍、性別などの垣根を超えて人々に愛される要素を備えていると言えるだろう。
もっとも歌詞の方は、歌手から歌手へ何世紀にもわたって受け継がれている間に、少しずつ姿を変えたり、”the River is Wide”などの替え歌が出来たり、と幾通りものヴァージョンが存在する。
ここでは、フォークロックのスタイルで、小気味よく楽しげに、ダンサブルなアレンジで演奏されている。
6. Scarborough Fair – take2 – > 4:24
[Borderland Ballad ]
1曲めと同様のアレンジによる別テイクを全く異なる視点でミックスしたヴァージョン。
スカボロゥ・フェアという曲の持つ、幽玄でミステリアスな世界観があればこそ可能になるひとつの実験だ。
7. Loch Lomond > 2:23
[Traditional Scottish Song ]
Loch Lomond=ローモンド湖は、グレートブリテン島最大の湖。
18世紀に実在したBonnie Prince Charlieことチャールズ・エドワード・スチュアート王子の反逆とその顛末を描いた詩をもつこの曲は、スコットランドにおいては、ディスコや酒宴、ディナーなどのお愉しみのあと、宴の最後を締めくくる音楽として流されることが多い。
のどかな曲調に合わせ、ゆったりとバラード調の演奏が大半を占める中、このアルバムの最後を飾るこの演奏では、マーチ調の独特なグルーヴを伴った印象的な演奏を繰り広げている。
コーラスのバックで牧歌的なサウンドを聞かせているのは、スロヴァキアの牧童たちが使う倍音笛=フヤラ、大人の身長ほどもある胴をもつユネスコの世界無形文化遺産にも指定された珍しい低音笛だ。
品番 iota-020
配信開始日 2021.10.13
収録曲数 全7曲
収録時間 25:25
Spotify(クリックすると音楽が流れます)
ぜひ動画と一緒に全曲視聴してみて下さい🙌
ライター 黒澤邦彦(tacto rustico label/Founder, Musician)
黒澤邦彦(中世音楽家、民族楽器演奏家、作・編曲家、プロデューサー)
30年以上にわたる中世ヨーロッパ音楽家としてのキャリアに裏打ちされたマルチ・インストゥルメンタリスト。管弦打楽器をさまざまに操り、ブラジル音楽、ケルト音楽、アラブ音楽、アフリカンゴスペル、など多岐にわたる分野で活動中。
これまでに『AEORUS』『NRP Records』両レーベルから計7枚のリーダーアルバムを発表したほか、Final Fantasy IXの音楽制作などにも携わる。鎌倉を拠点とする極私的レーベル『tacto rustico』にて異なるジャンルの24枚のアルバムをリリース。
\ 新サービス開始! /
【鎌倉の街からワールドミュージック】
「Quiet Vibes 日本語詞で聴くケルトの美しき旋律」
「Natural Lives 温かな歌声で巡るケルトの名曲たち」で検索!
⇩
□■□■□■□■□■
【studio iota label】
日本の音楽レーベルstudio iota labelではCDの制作・販売、WEBコンテンツの発信、企業のWebライティング、動画BGM製作、アーティストやお店などの写真撮影、作曲・編曲事業、レコーディング・ミックス事業などを行っています。
【ウェブサイト】http://studio-iota.com/
【Facebookページ】https://web.facebook.com/iotabi
【note】https://note.mu/nagareruiota