防音について大事なお話。「遮音,吸音,制振」について
皆さん、こんにちは!Groove冒険家のZin “Atrevido” Hitoshiです。
メキシコに家を買い、職人さんに混じってマイスタジオ、防音室と防音ドアを作っている最中。
本日は、一級建築士の父がくれたアドバイスから記事を始めていきましょう!
メキシコに一軒家買ったことを父に伝えると、
え?!マイスタジオ作る?!お前はほんとにやることすごいな~!!と。
そんな事を言いつつも建築士ですからね、
自分の息子がメキシコに家買って、リノベするとなれば喜んで色々と教えてくれます♪
中でも「遮音,吸音,制振」についてはとても意義のある話で、これに関してはある程度の日本人の方も誤解や混乱があると思いますので、この機会に内容をシェアしていきます。
実は一口に防音と言っても、「遮音」「吸音」「制振」の3つに分類されます。
「遮音」
音を遮る。外に音が漏れない、音が入ってこない。質量で遮断する。
「吸音」
音の反響を減らしコントロールする事。スポンジなど空気の気泡層などでコントロールする。
「制振」
文字通り振動を制御すること。上の階に住む子供がドタバタする音、と言えば分かりやすいでしょうか。日本の防音事情ではかなり重要度が高いです。
浮床構造と呼ばれる手法で床に隙間を作り浮かせて直接の振動を軽減させていきます。
メキシコの一軒家では制振はさほど重要ではなかったので、制振に関してはノータッチ。
まずは遮音から工事に取り掛かります。音漏れを防ぐ事ですから。
遮音に大事な要素、それは質量(重さ)
音漏れを断ち切るためには質量が必要になります。
卵のケースやスポンジを壁に貼ればいいだろうと、日本の防音室作りブログでよく見かけますが、
❌それは吸音です。反響のコントロール。
音漏れはほぼ防げません。
質量の高いものというと、鉄,コンクリなどになります。
日本に暮らしている時、簡易防音室を作ったことがあるのですが、コストや取り扱いやすさを重視して石膏ボードを2,3重に重ねました。
コンクリに比べれば軽いですが、ダンボールとは全然違います!
たとえば、、、
日本の防音室を手掛ける会社が使っている『遮音シート』
見た目は2mmくらいのゴムシートですが実際には鉄が練り込まれていると職人さんから聞いたことがあります。
やはり質量、なのです。
日本ではコンクリはあまり使わないですよね?
湿気が多い国ですから、カビ発生のリスクが高いことが理由。
コンクリのコストは木材より高くつくので、日本の住居は主に木造です。
変わってメキシコは基本的に乾燥しています。そして鉱物資源が豊かな国。なんと木造の家よりコンクリやレンガで作った家の方が格段に安いのです!
という事でメキシコでの防音室作りには遠慮なく質量が練り込める、という訳です♪
僕のスタジオの壁は軽量ブロックで作られているので、遮音に対して質量が足りません。
そのままでは音はかなり通り抜けてしまいます。
解決策として、中壁と外壁にコンクリを厚めに塗ってもらいました。
父曰く、片面3cmは塗れとの事でした。
天井にも厚めにコンクリを流し込んでもらいます!
壁や中の天井,内壁にもコンクリを塗ります。これは遮音性能を高くするためです。
仕上がった壁の外側はこんな感じになりました。
しっかりと母屋(左)と防音室(右)の間にスペースが取られ、母屋への音,振動漏れを遮断。
母屋に見える窓への明り取りもできました♪
屋上には雨の浸水を防ぐ防水剤を塗ります。
防水材には白とレンガ色がありますが、少しでも室内温度が上がるかな?と思いレンガ色をチョイス。
側面にも防水材を塗ります。
結局、雨のシーズンに雨漏りが発生したため、今は防水性能が高い3mm厚くらいある防水シートを貼っています。
部屋の吸音
家の外側が出来上がったところで、室内の吸音に取り掛かります。(壮絶な防音扉作りがありましたので、次回ご紹介しますね!)
さいしょに吸音材を貼り始めましたが、素材選びと仕上がりに結構悩みました。
ここでチョイスした波型ウレタンスポンジは日本でも有名ですよね。
でも吸音性能で言うと「中」くらいなんです。
本当はグラスウールを貼りたかったんですね。。。
グラスウールは日本の建築ではよく使われるポピュラーな素材。黄色っぽいスポンジなのですが、中にガラス繊維が練りこまれています。
ビルのボイラー室などの機械音のうるさい場所に設置して吸音材として使われるほか、断熱材としての用途も多い、とても便利な素材です。
僕は過去の現場バイト経験でグラスウールには馴染みも深く、効果が高い事を知っていました。
ですが・・・メキシコでは探してもほぼ無い!
方々探しましたが見当たらず。専門的なお店では取り扱いはあったものの、べらぼうに高価!
それもそのはずですね。
湿気が全然ない町、レンガ,コンクリ作りの家、さらに防音なんて考えもない文化!!笑
メキシコ人の間では未だに「卵ケースの吸音効果」への信仰がありますが、昔々まだ波型スポンジなど吸音材がほぼない or 高価だった時代に、代用品として使われていた話し。
吸音効果は低いです。
ちょっとお金が払えるなら波型スポンジ、もうちょっと払えるならグラスウールのご購入をオススメします。
グラスウールも密度や厚さに色々なバリエーションがあります。
密度と厚みはある方が吸音効果が高いです。
吸音素材を比較してみる
比較①
ただの真っすぐなスポンジでもいいんじゃないか? もっと安いぞ! と思って色々調べました。
結果は吸音効果「低」のようです。
波型との違いは「音の反響の処理の仕方」。
真っすぐ壁に飛んできた音を波型で細かい反響に分散して処理、吸音に繋がります。
そういう意味では先に述べた卵ケースは理想的な形はしていますよね!でもいかんせん厚みが足りず吸音処理しきれません。
比較②
ダンボールで吸音出来ると紹介しているwebページなどもありますね。
これは結構いいと思います。が、使い方に工夫が必要です。
そのままベタっと使うのでは空気層があるにしろ波型ではないので反響音の処理に乏しい。
そこで以下のようにすると、波型の空気層の間に音が入って乱反射させて吸音できます。
層も多いので効果もアップ♪
タダか安価でダンボールが沢山手に入ったらナイスな方法ですね♪
ところが、、、
実際「防音室のすべての壁にやる」となると作業時間と手間が膨大です…。
ダンボールを手に入れるのもメキシコでは一苦労……。
こういった理由から、グラスウールやダンボールは断念して吸音効果「中」の波型スポンジを買う事にしました。
音楽室の壁はどうなの?
音楽室の壁。そう、あの白い壁に無数の穴が空いたあの壁は、どうでしょう?
これらの音響ボードは、吸音のために作られた素晴らしい素材。
壁に飛んできた音が穴の中を通って、中で乱反射して減衰させていく構造ですね。
ただ僕個人の意見としては、グラスウールや波型スポンジの方が効果が高いと思います。
音楽室は恐らくお子さんも沢山使うために「スポンジなどではイタズラされてしまう」という点でこの板を採用しているのではないでしょうか?
グラスウールは中にガラス繊維が詰まっているため、叩いたりしてほこりが出たら体には良くないですしね。
それにスポンジはグレー。部屋が暗くなります。
波型スポンジでも部屋の内装はオシャレにしたい!
上記のように波型スポンジは、色がグレーで部屋が暗くなってしまいます。
他の色も発売されているみたいですが、ウェブで調べてもメキシコでは取り扱いがないか、グレーより断然高価(これは日本でもそうですが)。
心地良くなる環境でこそ、いい音楽が生まれる
と、考えるポップ野郎な僕は、何とか!明るく!したいわけです!!
(ダークでヘビーな音楽を作りたいならガレージやコンクリむき出しの場所の方が向いているとは思います。もちろんグレーのスポンジのまま「落ち着いた感じ」「この方がいい」という方も然り。)
❌スポンジにスプレーで色を塗る。
吸音効果が落ちそうなので却下。
⭕️木の枠を作って布張りをする。
都内によくある貸しスタジオの仕様を真似てみます。
まずは木の枠の厚みを決めて(僕は2cmにしました)、枠が填まる分のスペースを開け、スポンジを接着剤で壁に直接貼り付けていきます。
スポンジが貼れたら、木の枠の寸法を測って切り、ネジで枠を組みます。
次に布貼り。
布張りは職人さんがアイデアを出してくれました!
職人さん「ホチキスで止まるよ。普通のホチキスで。」
ほんとに普通のホチキスで大丈夫か~?木にも刺さるものなの?と思いましたが、やってみると刺さります!
失敗も何度もするのですが、コツを掴めば9割以上の確率で木にしっかり刺さります!
布を引っ張りながらホチキスで固定!
それをスポンジの上に嵌めていきます。
イメージ通り!
シックな感じは残しつつも部屋が格段に明るくなりました!
布の良い点は、飽きたら別の色の布を買ってくるだけです!模様替えまでできちゃう!
布自体も吸音効果に少しのプラスになっています♪
インターホンや電源、スイッチ部の設置には工夫が必要で、
約3cm ほど壁のスポンジから浮かせておかないと、布の上に出てきません。
こちらも職人さんのアイデアで、木の枠やプラスティックの枠を使ってかさ増しする事に。
寸法を測ったり布を切ったりなかなか大変でしたが、うまくいきました!
床にカーペットを貼る
お次は、床です。
床はコンクリむき出し状態。弱点は湿気は通す。
隣の空地から降った雨が地面からしみ込んで浸透する湿気。
スタジオまで上がってこさせないためには、
まずはタイルを貼ります。
そのタイルの上にカーペットを貼ります。
カーペット屋さんがあり、280cm x 好きなメートル数で頼めるシステム。必要なメートル数買ってお持ち帰りします。
敷くだけでいいんじゃないか?と思っていたのですが、職人さん曰く「ズリッと動くぞ」と。
ですのでカーペット用ボンドで貼っていきます。
引っ張りながらシワが寄らないように…。うまく貼れました。
カーペットも吸音に役立っています。
ドラムを置く付近には以前の家で使っていた3m x 2mの厚手のカーペットも敷きます♪
壁一面に贅沢に鏡を貼る
かなりいい感じに仕上がってきました。
ここで一番の大仕事と言っていい「鏡張り」をします。
僕は以前から演奏フォームのチェックはとても大事だと思っていて、小さな姿鏡を使っていました。
で、メキシコでは巨大な鏡が安いのです!
280cm x 360cm、3mm厚の鏡の価格が日本円で5000円くらい!!
理由はメキシコはミネラル豊富な国。宝石などの採掘でも有名。
コンクリや鏡が、日本より安いんですね!
巨大な鏡を購入して、壁一面に貼る事にしました。
高さ220cm x 横幅 5mくらい。
メキシコ人にとっては贅沢なものですが、日本で鏡を買うと思えばめちゃんこ安い!!
小さめサイズのスタジオが広く見える、明るくなる、など利点も大きいです♪
設置には細心の注意をしました。
事前に寸法を念入りに計算。何といってもサイズが巨大ですからね。
なるべく大きく取れるようにしつつも、下に設置するコンセント部は避けなければなりません。しかも鏡となるとちょっと寸法違った~!ってなっても切ったり削ったりはほぼ出来ません!
部屋の天井の高さなども一直線じゃないですから、少し小さめに切ります。
なんとかうまく設置!
計算にかなり気を使った甲斐がありました!
壁への貼り付けはシリコン。鏡屋さんでオススメされたものです。
鏡と鏡の間に設けた2mmくらいの隙間には黒のシリコンを詰めていきます。
換気用の窓は二重構造
音漏れが気になるので窓は極力無しにしたかったのですが、換気は必要。
機材には湿気が一番の大敵ですからね。
小さいながらも25cm x 90cmくらいの換気窓をオーダーします。
メキシコには、こういったオーダーが出来るお店がたくさん。
修理して長く使っていく国なので、修理屋さんなどが町の至る所にあります。
今の日本だと壊れてメーカーに持って行っても「新しいの買った方が安いですよ~」と言われてしまいますよね。
注文した窓は二重構造にしました。
内開きと外開き。
枠部分のスペースからも音が漏れるのでモール(スポンジ)を貼ります。
閉めるためのノブも工夫。
ノブを閉めた時にキュッと圧を掛けてキッチリしまるような取っ手をチョイス。
これでノブを閉めた時に圧が掛かり密閉度アップ!
実際窓を閉めると外界と遮断された感覚がすぐに分かります。
追加の吸音とインテリア
これで完成!
試しでドラムを演奏してみると
・
・
・
まだ反響音が多いと感じます。
それもそのはず、一面は全面鏡張りにしたわけですから、反響しますよね。
しかし鏡は譲れない部分。
スポンジが少し余っていたので、天井に貼ってみる事にしました。
左右のグラスブロックとブロックの間に収まるようにしました。
大きさとしては2m x 1mほど。
こんなんで効果あるのかな?と思ったのですが、これがなかなか!
これでもかなり反響は減りました!
吸音工事これにて完了!!
インテリアに太鼓類を使って、このように出来上がりました!
コロナ渦以降オンラインレッスン急増の今、こうしてPCを横付けして。
夢のMyスタジオ、完成です!!
さて、今日の内容はここまでです。
次回第三弾は、「自作!防音ドア。」についてお送りします♪
またお会いしましょう。
Hasta la próxima(また次回)!!
■関連記事
・【アフリカンリズムの考察】日本人にとってのリズムとは同調、アフリカ人にとってのリズムとは対話。
□■□■□■□■□■
【studio iota label】
日本のレコード会社 studio iota LLC.ではCDの制作・販売、WEBコンテンツの発信、企業のWebライティング、動画BGM製作、アーティストやお店などの写真撮影、作曲・編曲事業、レコーディング・ミックス事業などを行っている。
Craft Gin[MV]前田紗希×tachibana / 東京水上バス・パーフェクトガイド『隅田川ライン』Tokyo Water Bus – Japan Guide
【ウェブサイト】https://studio-iota.com/
【X(Twitter)】https://twitter.com/nagareruiota
【note】https://note.mu/nagareruiota