【ワンダーキッチン】1000を超える料理をつくる奇才が、鎌倉の街を盛り上げる|鎌倉の笑顔に会いに行く


鎌倉。歴史や伝統と共に自然と調和したライフスタイルを楽しむ人が入り混じるこの町。

この町を訪れる人、この町に住む人が国籍を問わず増えている。なぜだろう?

きっと、鎌倉には会いに行きたい魅力的な笑顔があるからかもしれない。

そんな鎌倉で笑顔が生まれる場所のひとつを訪ねてみることにした。


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ここはあなただけの秘密の隠れ家

訪れた人が笑顔になって帰っていくカフェが鎌倉にある。

自分だけにとっておきたくなるような、秘密の場所。



そのカフェは鎌倉駅から徒歩5分。

駅前にでもあるのだろうかと思いきや、そこは『秘密の隠れ家』。
徒歩5分といえども簡単にはたどり着けない。

駅裏の商店街を進み、さらに小さな道をたどってアクセスしなければならない。

この小道、先がどこに通じているのか見えにくく、不安になって途中で断念する人も多いよう。

だが、勇気を出してこの小道を進むとそこにはたくさんの笑顔があった。




世界の食堂が鎌倉に

小道を進むと「WanderKitchen」お店の看板と木造の2階建ての古民家が現れる。

地元の人には「ワンキチ」や「ワンダー」という愛称で親しまれているお店だ。


オープンテラスの階段を登り店内へ入ると、木をベースにリフォームした温かい雰囲気の空間が現れる。
入ってすぐに目にするペレットストーブがさらにお店を暖かくしてくれそうだ。

お店までの通り道に出ている看板には「eatery 世界の家庭料理」の文字が。

お店のオープンテラスから見渡す景色は、確かにどこかの海外に来たような気持ちにさせてくれる。

eateryーカジュアルなご飯が食べられるところ〜

Earth on the plate

WanderKitchenの料理は、口の中を喜びと探究心でいっぱいにしてくれる。

WanderKitchenの料理は日替わりで変わる。オーナーシェフの黒澤邦彦さんがその日の朝に鎌倉のマーケットで食材を仕入れ、その食材が活きる料理を日替わりで提供している。

ある週のメニューを数えると88点もあったそうだ。

全てのメニューの数はオープン以来から数えて1000を優に超えている。

「このお店で出されるコップの中には宇宙があり、皿の上には地球がある」と黒澤さんは言う。

中世音楽をきっかけにして、世界中の料理を学んだ黒澤さんが振る舞う料理には物語がある。

料理を引き立たせ、お客さんにゆっくりして欲しいという思いから「余白」にこだわったお店づくりをしている。

お店の内装も木や、温かみのある色を使ったハンドメイド。すっかり居心地が良くなって開店から閉店までいるお客さんもいたらしい。

毎日手書きでスタッフが書きかえているメニュー表もこだわりで、お客さんのくつろぎの時間を創り出している一つのエッセンスだ。

「計算し尽くされたものは居心地が良くないから」
とお客さんの立場に立って創られるこのお店には、元々クリエイティブディレクターとして活動していた黒澤さんの多岐にわたる経験が詰まっている。

 

7ツノカオヲモツオトコ

黒澤さんはプロデューサー、デザイナーなどクリエイティブな仕事を国内外でしていた。

20代で独立する時に7つの職業と7種類の名刺をもったのがきっかけ。
バリ島の自然や技術を生かしたお店づくりのプロデュースを依頼され、バリ島に1年間住んでいたこともある。

30代になると新世代のレシピ本の先駆けとして「カフェめし」などの書籍も制作。
ワーゲンバスでの料理のケータリング、世界中の音楽とその音楽にゆかりのある食事を提供する「ワールドビートカフェ」というプロジェクトも各地で運営。

このようなスタイルは今でこそ珍しくないが、黒澤さんは場所と音楽と料理を自由自在に操る先駆者だった。


料理に興味を持ったのは学生の頃。「自分の食べたいものを作りたい」と、女性誌のレシピページを見ながら料理を作り始めた。

大学4年生の時には両親に志願して自宅で予約制のレストランを始めた。

「ないものは自分で創り出す」
それが黒澤さんが展開する色々なお店の在り方に繋がっているのだろう。

そして、2006年、長谷に「2階に住んで1階でカフェをする」という条件付きの古民家を見つけたことが鎌倉へやってくるきっかけとなった。


今はWanderKitchenグループの代表として、鎌倉でWanderKitchenをはじめ、デザイナーズゲストハウス「Villa Sacra」、住むように泊まり、人と文化の交差点となるゲストハウス「Ohmachi Junxion」、古着とブロカントのお店「DEEP BLUE FICTION」を経営。間違いなく鎌倉の街を盛り上げる人物の一人だ。

さまよえる厨房

Wander=さまよう Kitchen=厨房

料理はもちろんお店で開催しているイベント、BGMや家具、食器一つとっても全てにメッセージがある。

『WanderKitchen』という店名も、黒澤さんの発案だという。
カフェにとどまらず、この場所をきっかけにして思いを自由にさまよわせ、色々な世界への入り口としてほしいという願いが、由来だ。

たまたまお店を訪れたカップルは、黒澤さんにアジアのコーヒーの話やお店にあるコーヒー豆について話を聞いた。その後彼らはアジアのコーヒーを巡る旅に出かけた。

系列のゲストハウスで働いていたスタッフさんは今ではメキシコで自らゲストハウスを経営している。

また、ラオスの食文化や織物の話を黒澤さんから聞いたスタッフさんは今度ラオスに行ってくるそうだ。

黒澤さんが人々の「何か」のきっかけを「カフェ」という場所を通して創り出していることを感じるエピソードだ。


黒澤さんは、もともと音楽が好きでヨーロッパの古楽に傾倒していたバックグランドをもつ。

WanderKitchenが今のような料理に至ったのは、『中世音楽と料理との深い関係性を知った』ことがきっかけだった。中世音楽の楽譜は手写本と呼ばれる手書きのもので、その中には中世の貴族の生活が書かれ、料理についても書かれていた。

この手写本がWanderKitchenの料理のルーツである。

手写本にはレシピは載っておらず、料理名と食材から想像してその料理を再現しなければいけない。そこに壮大なロマンを感じると黒澤さんは話す。



大航海時代には様々な食材、調味料や文化が世界を巡り、その流れとともに変化していった料理。同じ名前、同じ調理法でも宗教や歴史的背景によって使う食材や味付けが全く違うものになっていった。

その当時のことを紐解き想像しながら料理を作る楽しさを知る黒澤さんだからこそ作ることのできる料理がこのお店にはある。

秘密のレシピは偶然から

WanderKitchenの名物料理である「コリバタカレー」。

バターチキンというのは聞いたことはあるけど、コリバタ?
どこの国の料理?聞きなれない響き。
このコリバタ、実は南インドの某有名ホテルの門外不出のレシピだった。

タミル語でコリ=鶏、バルタ=炒めるという意味の南インドの料理だ。

それがなぜ鎌倉で食べることができるのか。


それは黒澤さんが仕事でバリに住んでいたときのこと。バリで出会ったシェフが「実はこのカレー、絶対にレシピを教えてはいけないんだけど、、、」と言って、黒澤さんに教えてくれたそう。

バリの開放的な雰囲気がそこにいる人をさらに開放的にしてしまうのだとか。

それ以来、この門外不出のコリバタはWanderKitchenの看板メニューの一つになった。


メニューは毎日十数種類あり、さらにそのメニューは毎日変わる。
あれもこれも食べてみたいと思うほどのバラエティに富んだメニュー。

そして、その料理の背景にある歴史や宗教、音楽の話を聞くと口に運ぶ料理がますます楽しくなってくる。

earth on the plate」お皿の上にある、地球の様々な文化や歴史に想いを馳せて、料理を楽しむお客さん達。

このお店は訪れた人に世界をより身近に感じさせ、食べ物や地球を大事に思う気持ちへと繋げてくれる。

スタッフから笑顔に


WanderKitchen projectの大所帯の中、陰で日向でサポートしているのが女将の愛さんだ。

愛さんはWanderKitchenで数年働いた後、一旦東京に出て、同じように飲食店で働いていた。
その中で、やっぱりWanderKitchenでもう一度働きたいという気持ちが再燃し再びここに戻ることを決めた。このお店の魅力が彼女を鎌倉へと再び連れ戻したのだろう。

特にこの1年間はお店で開催するイベントのプロデュースを手掛けた。

毎月のペースで開催された写真、陶芸、ハンドクラフトのイベント。
このバラエティの豊富さからも黒澤さんと愛さんがいかに人との縁を大事にしてきたかがわかる。

自らもミュージシャンや料理家として創作活動をする愛さんはお店がより居心地の良い空間になっていくよう日々創造している。


オーナーシェフである黒澤さんの技術をまだまだ盗んでいきたいと愛さんは話す。
「黒澤さんはお客さんによって味付けを変えている。その人の体調や気分によって少しずつ料理の味付けを変え、食事をより楽んでもらえるよう工夫している。そしてお客さんが欲しているものを汲み取って提供するホスピタリティも彼から勉強したい。黒澤さんと接したお客さんは皆笑顔で帰っていくから」



WanderKitchen Projectで働くスタッフは海外からのスタッフを含め20名を越える時もある。
スタッフがお昼を食べに来ると、どんなにお店が混んでいても愛さんはいったん手を止めてスタッフと一言でも言葉を交わす。人手が足りない時は別の店舗の仕事もこなす。

「人間生きていれば皆なにかしら抱えていることもある。だからこそお客さんはもちろんスタッフにも寄り添って心地よく働いてもらえたら」


愛さんがお客さんやスタッフと話すときの笑顔は見ていてとても温かな気持ちにさせてくれる。

ここから笑顔になって


このお店が地元に長く根付くお店であってほしいと語る黒澤さん。

これまで仕事で海外を何カ国も周った中で、特にタイのバンコクの「ロットファイマーケット」というナイトマーケットがお気に入りだそうだ。

鉄道の操車場と車庫を使って毎週末開かれるこのマーケットでは飲食や雑貨、アンティークのお店が出店され、ライブも行われる。(現在は場所を変えて、タラートロットファイ・ラチャダーという名前で毎日開催されている)

チェンマイのサンデーマーケットもお気に入りの場所の一つで、毎週日曜日に街全体がマーケットになるというコンセプトがお気に入りだそうだ。

 「いつか鎌倉でナイトマーケットやサンデーマーケットをやりたい。」と鎌倉への愛が尽きることはない。

一方で、将来は森の中で動物を相手にレストランを開きたいと冗談交じりに語り、生まれ変わったら女子になってチヤホヤされたいとお茶目に話す。

黒澤さんの、自然体で誰にでも同じ目線で話をする人間性に魅了され、皆何度もこのお店に足を運びたくなってしまうのではないだろうか。
WanderKitchenはこれからも訪れた人たちを笑顔にしてくれるのだろう。






住所 : 248-0012 鎌倉市御成町10-15
営業時間 : 12:00~20:30 L.O. : 不定休
アクセス : 鎌倉駅西口より徒歩5分
ワンダーキッチン ウェブサイト : wanderkitchen.net



■編集後記

私の思い出の味はチューというアフリカの料理だ。私が大失恋をして満身創痍の時に、黒澤さんがこのチューを作ってくれた。

失恋なのにチューと今考えるとシュールだけれど。

ズタズタになった心でお店を訪れたあの日、黒澤さんと愛さんの柔らかな笑顔があった。

泣いている私の話をひととおり聴いてくれて、「食べないと元気が出ないよ」と黒澤さんの励ましの言葉。

この言葉が黒澤さんから出ると、「あー、私かなり弱っているんだなぁ」と感じる。

チューはご飯の上にハヤシライスのソースがかかっていてその上には揚げたての魚がまるまる一匹乗っている。

甘めのソースが心を落ち着かせ、揚げられた魚を骨までボリボリ食べていると少しずつ心に灯りが灯ってくるようだ。

このチューを食べながら、黒澤さんはアフリカ文化の話をしてくれた。「世界は広い、男だって日本だけじゃなくて世界中にたくさんいるんだから」そう話す黒澤さんからは、何事も広い視野で考えることをいつも気づかせてくれる。

心に沁みいる味というのはこういうことなんだろうかと思った。

 

 

 ライター ユウキ

 

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【studio iota label】

【LoFi Hiphop BGM】流れるイオタ『黄昏を駆け抜ける』 (Official Album Video) – Driving through the twilight

 



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>「心から出て心に還る音楽を」をモットーに、粋な義理人情を大事にし、 旅に似合う音楽を提供し続けていきます。

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