世界三大ピアノといえば、
- スタンウェイ(創業地:アメリカ/ドイツ)
- ベーゼンドルファー(創業地:オーストリア)
- ベヒシュタイン(創業地:ドイツ)
日本のピアノといえば、
- ヤマハ
- カワイ
等があり、この二つのブランドは1985年から、音楽業界とピアノファンが大注目するビッグイベント「ショパン国際ピアノ・コンクール」で公式ピアノとして使われています。
今回は、同コンクールで、2010年から公式ピアノとして採用されている、
イタリアの【FAZIOLI】(ファツィオリ)の試弾レポートをさせていただきます。
試弾させていただいたのは、ポプラ、アカモミ、燻製されたユーカリなどを素材にした4台のピアノです。
この日は、美味しい食事をした後のような満足感、自然豊かな場所に行って心洗われるような爽快感を味わうような一日でした。
その一部始終をご紹介いたします。
東京音楽大学大学院修了。その後、これからの文化・社会における音楽の役割に関心を持ち、2016年から子ども向け演奏企画 mUjiKanvas(ムジカンバス)を立ち上げる。現在は個人の演奏活動と共に学童での音楽監修等、子ども向け演奏企画を中心に活動中。パンとコーヒーに心踊ります!
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田町にあるショールームへ入ると
しんと静まり返る音楽ホールのように神聖な雰囲気でした。
照明に照らされたピアノは悠然と待っており、話題の【F308】と思われるピアノもありました。
これからどのような時間を過ごせるのか期待が高まります。
そこに社長のアレック・ワイル(Alec Weil)さんが颯爽と、そして暖かい笑顔と共にいらっしゃり終始丁寧に迎えてくださいました。
自己紹介等が終わると、いよいよ始まりです。
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試弾の順番は、奥行きサイズが「183㎝の【F183】」から「308㎝の【F308】」
に向けて順番に進むコースとなっています。
まず、【F183】のピアノの前にゆっくりと案内されると、
ワイルさんは高級レストランのシェフさながら、
「このピアノはポプラの素材でできています。響板にはアカモミといってヴァイオリンのストラディバリウスと同じ素材が使われています。」
というような感じで、そのピアノの素材やサイズなどの特徴を説明してくださいました。
その間、キラキラ輝く【F183】を目の前に、ピアニストとしてはよだれが出ちゃうくらいに、好奇心と期待でいっぱいの状態です。
それを制するような落ち着きで、ワイルさんは、
「…ファツィオリのピアノは一つ一つが職人による手作りです。ですから、ピアノの音に個性があるのですよ。」
というような感じで、手を差しのべ、ついに私はファツィオリの音と対面となります。
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ピアノの前に座ると、鍵盤やピアノの弦の輝き、ピアノの内側の木目の美しさに既にうっとりでした。
そして、期待を込めて一つ音を鳴らしてみる。
それはもう夢のような心地で、
そこがレストランなら、肩をすくめフォークとナイフを握り決め、笑顔で「おいしい!」を噛みしめるような感じです。
木のぬくもりを感じる柔らかな音でありながら、
ぱっと弾ける快活さと華やかさがあり、
もっと弾きたいという気持ちにさせる音でした。
まずはシンプルにスカルラッティのソナタを、
次にショパンの革命を弾いてみます。
低音の豊かな響きと、高音の煌びやかさが曲の幅を広げてくれるような感覚で、
しっかりバランスをキープできれば豊かな響きになる印象です。
興奮さめあらぬまま、次のピアノに案内していただきました。
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再び、落ち着きと品格に溢れた様子で、
「このピアノは212㎝のサイズで燻製されたユーカリが使われています。…」
というような感じで2台目【F212】の説明をしていただきました。
1台目で味を占めた、という感じの私は、2台目が楽しみでなりません。
さらにただのユーカリではなく、
「燻製した」(まさにレストランのよう!)というのだから、その未知の世界にはさらに興味をそそられました。
そしてまた一つ音を、鳴らしてみる。
え!と先ほどのピアノとの音色の違いに驚きました。
先ほどのピアノと比べ、明らかに音が丸く木のぬくもりを感じる音でした。
といっても、音の輪郭はぼやけたわけではなく、
尚鮮明で、口当たりが柔らかくなった印象です。
先ほどのピアノが快活な少女なら、こちらは柔和な表情の女性といった感じでしょうか。
同じスカルラッティやショパンを弾いても、キャラクターが違って聴こえます。
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そして次はセミコンサイズの【F228】です。
ボディは木目で暖かな印象ですが、中のフレームは、通常ゴールドカラーのところ、このピアノはシルバーカラーで、モダンなデザインでした。
また一つ音を出してみる。
わあ!と、また音色の変化に驚きます。
このピアノはとにかく明るい音でした。
といっても、やはり品と繊細さのある明るさで、月の光のように、どこまでも迷いなく伸びて広がってゆくような音でもありました。
ドビュッシーの月の光を弾いてみます。
鍵盤をなでるだけで広がってゆく響きには、
演奏しながらも、身をゆだねて音楽を“聴ける”幸せがありました。
まさに月を眺め、月の光を浴びているような感覚かもしれません。
ここまでで、既に幸せに満ち満ちていた私ですが、
メインの【F308】が待っています。
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まずは、308㎝という大きさと堂々たる様子にしり込みしてしまいます。
ワイルさんは、本日のメインディッシュですというように、または、自慢の娘を紹介するような、そんな誇らしさと喜びをもって、ご紹介いただきました。
そして、一つ音を鳴らしてみる。
わあ、とため息交じりに音に対する感動が沸き上がってきます。
ここまで大きなサイズになると、
この大きな楽器全体を自分の体の一部と感じ、
“鳴らす”ことができるのだろうかと、
不安になってきます。
ぼーんと低音を鳴らしてみると、
自分のスケールより大きなものが、目の前で鳴り響き、
思わず手を離して、すごい、と感動と共に先程の不安がよぎります。
例えば、今まで50mプールでは自由に遊べていたのに、
広い海へ投げ出された途端、どうしようと不安になってしまうような感覚でしょうか。
底知れぬものを把握し、コントロールするには
楽器と対話する時間が必要だなと思いました。
しかし、この短時間でも、その楽器の持つ新しい音楽の可能性は大いに感じました。
長い弦を隅々まで響かせ、更に高音とのバランスを保ちながらピアノ全体を鳴らせるかというのは、バランス感覚と大きな全体像を見渡せる想像力が必要だと思います。
そしてなにより、その楽器の特徴をとらえた上で、
自分の理想の響きを見つけることが大切で、
わずかな試弾の時間でも、
自分の音楽に対する想像力を試されているようでした。
逆に、このピアノと対峙し続けることで
自分の可能性が大きく広がってゆくのではないかという、
希望も湧いてきました。
一通り、ファツィオリのピアノを味わわせていただいた余韻に浸りながら、ワイルさんと様々なお話をさせていただき試弾は終わりとなります。
そして、ショールームのドアをでました。
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今、振り返って改めて思うのは、
どのピアノも、ピアニストに対して“正直”で“誠実”であったという事です。
自分の弾き方次第で少し力が入ると、ピアノも敏感に反応し、硬い音になります。
つまり常に演奏者に正直で誠実であるが故、
いい所も悪い所もすぐにわかるのです。
厳しくもありますが、常に良い方向へ導いてくれる、
最高のパートナーなのではないかと思いました。
自分の想像以上の音がふと出た時は、
宝物を見つけたような気持ちになり、
再びその音に出会いたい、
更に新しい音に出会いたいと、
探求心をくすぐられ、飽きることがありません。
その楽しみは、どこのピアノブランドがいいとか悪いとかではなく、
あのピアノブランドがフランス料理のようなら、こちらのブランドはイタリアン、
というようにブランドによって違った味わいがあるのではないかと思います。
コンクールで、指定ピアノブランドが数社あるという事は、ブランドによって、そういった音色や響きに違いがあるからなのしょう。
演奏者が表現したい音楽というものを、
より明確に持っていたからこそ、
ピアノブランドの幅は広がってきたのだと思います。
308㎝という大きなサイズのピアノが誕生したことや、
それが国際コンクールで公式ピアノとして採用されるようになったという事は、
ピアノ事体の発展が、演奏者の感性の発展と共にあり
今も尚、その両方が発展途上の中にいるということを意味しているのだと思います。
更に言えば、これからのピアノの発展は、今とこれからの演奏者たちの感性次第で、如何様にも築いてゆけるものなのではないかとも思いました。
現代の演奏者の感性に寄り添いながら発展し続けるファツィオリピアノを試弾させていただいたからこそ気づけたことかなと思います。
ファツィオリというピアノの音色を堪能でき、
貴重な体験させていただきありがとうございました。
ご試弾をご希望の方はお問い合わせ、またはこちらの番号 03-6809-3534へお電話下さい。
弊社ショールームにぜひお立ち寄り頂き、ご試弾や美味しいエスプレッソを飲みながら、
音楽談議など楽しいひと時を共有できればと思います。
編集後記 : 音の立ち上がりもイタリアンスポーツカーのように素早く響板の鳴りもパワフルで現代の楽器らしい効率的な鳴りは流石です。 オペラの国の楽器らしい明るく豊かに歌うピアノでした!
【ウェブサイト】http://studio-iota.com/
【キャンプマガジン】https://iotabi.com/campio/
【note】https://note.mu/nagareruiota