音楽の起源は、古代の呪術師たちの行為から始まったと考えられています。
人々によって社会が作られ階層ができた時代、人が病気になると、それは死者や先祖の霊が悪霊となり、人に取り憑いて、その人を苦しめると考えられていました。
つまり、病気を治すためには、取り憑いている霊を追い払えばよいと考えられていたのです。
呪術師たちは工夫を凝らし、悪霊が退散したくなるような、身震いするような音を作り出したといわれます。
その音は、悪魔を追い払うための魔術としての音だったため、現在私たちがイメージする音楽とはかけ離れているもので、震え声、唸り声といった音からなるものでした。
古代呪術師たちは、シャーマンや祭司、医術者、音楽家が誕生する以前から、音楽を扱っていました。
・・
このように古代の呪術師が、病気は悪霊が取り憑いたために起こることと考えていた時代が終わると、次は神々の時代へ移ります。
人間が病気になるのは心と体の”調和”が乱れているためと考えられ、楽器や歌が生まれます。音楽は“調和” “美” を備えた音となり、感受性に訴えるものとなりました。
ピタゴラス音律のつくり方
楽器を使った憑依儀礼
東アフリカ、ケニアの村ではカヤンバ・ザ・ペポ(カヤンバの精霊を呼ぶ音楽)という儀式があります。
〜カヤンバ・ザ・ペポは治癒の力があるんだ。悪い病気とかを追い払ってくれる。またそういう儀式の時に演奏する。〜
と、いう事で、ワタクシ!!
被験者(患者役)となってシャーマンによる黒魔術を体験してきました!!
こういうプリミティブな事は疑ったり理論的な考えに当てはめてはいけませんね!
レッツ、ゴウ。
現代音楽のリズムのルーツ「西アフリカ」と、謎多き「東アフリカ」
そもそも、「東アフリカ」の音楽は、ミステリアスな存在とされています。
現代音楽のルーツというとまずはアメリカですが、源流を掘っていくと奴隷としてアメリカ大陸に連れてこられてしまったのは「西アフリカ」諸国の人々。
現代音楽のリズムのルーツは「西アフリカ」なのです。
【見解】
・メロディーや楽器がヨーロッパから
・リズムはアフリカから
「ケニアには伝統音楽はない」と唱える学者もいたほど、東アフリカミュージックはミステリアスな存在です。
現地でもプリミティブな音楽というのはそれほど普及していないエピソードがありますので、その時点で、かなりディープなものである事は想像に難くないですね。
ケニアの海岸地方、モンバサ近郊 ミリティーニ村にて
ミリティーニ村に到着してみると、
この村では太鼓ではなくカヤンバという楽器を学べるのがメインのようです。
カヤンバ
乾燥させた竹の茎を編んで、中には小石のようなものが仕込んであります。
斜めにすると小石が流れ、サラサラとした音が出ます。
本体の上には固い竹がアーチ状に取り付いており、左右に振る際親指でHit。パチッという音が鳴りリズムを生みます。
カヤンバの演奏を動画でお楽しみください♪
見ているととても簡単そうですけれど、こんなスムーズに動けないんです。
一体どうして?! シャーマンによる黒魔術に抜擢
太鼓の師匠 : この村ではカヤンバ・ザ・ペポ(カヤンバの精霊を呼ぶ音楽)をやる。
カヤンバ・ザ・ペポはHeal(治癒)の力があるんだ。悪い病気とかそういうのを追い払ってくれる。またそういう儀式の時に演奏する。
お前さんも体の悪い所があるなら治るんだぞ?
冷え性でお腹が弱いので、もし治るならやって欲しいです。
そう伝えると、女性のシャーマンが現れました。
!?!?まるで用意されていたかのように。
シャーマン : ああ、それは○○の精霊の仕業だね。この風の精霊が、風と共に関節部を通ると、そういう症状を引き起こすんだわさ。
冷える=風が通るってことですね?
こういうプリミティヴな事は疑ったり理論的な考えに当てはめてはいけませんね!
現代科学が進んだ今、科学で立証できない事は信じられないと思われがち。でもそういった先入観が、自然と共に古来から伝わってきたパワーを失わせると思います。
トトロで言う「まっくろくろすけ」とか。よく小さい頃には何かがいるのが見えていたのに物心ついたら見えなくなったと言う話しも聞きますからね、
自分自身はそういう記憶や経験は全くないのですが、信じています。
謎と葛藤の儀式がスタート
小さな土作りの部屋の中にシャーマン、それから太鼓やカヤンバを叩き精霊を呼ぶ人達。後ろの赤い服の女性達は…踊り子なのでしょうか?!
カヤンバが竹を弾きながらリズムを刻み始めます。
始まった(心の声)
癒し系サウンドのカヤンバを使うだけあって、始まりは静かに厳かです。
患者役ということで、なるべく大人しくしていようと。しかし周りの皆はめっちゃ楽しそうです。
体に飾りを付け、頭に布を被り。
儀式は進んでいきます。
カヤンバのサラサラ音が部屋を満たし、その上を男性の歌声をメインに、そして呼応するように女性達のコーラスが入ります。
女性達の声がとても高いので、男性の「低」と女性の「高」のハーモニーが儀式をその世界へといざなっていきます。
時折女性が発する「クルルルルルルル~」という鳥の鳴き声のような声が、ちょっとした鳥肌と共に耳をつんざきます。
そして戦慄の儀式へと
歌はリズミカルに、大きくなっていきます。
ケニアでよく見かけられる肩を揺らしたダンスが始まり、その中で静かに感じる空気。
女性が「聖水」を顔に掛けてきました。
この聖水ですが、恐らく色々なハーブ(薬草)が入った水だと思います。
俗に黒魔術、プリミティブな儀式というのは眉つばと思われがちですが、実際にはハーブを使ったオーガニックな治療を有していると感じました。
聖水を口に含む。
厳かな気分に浸らなくては、患者だし。
そんな考えとは裏腹に、周りの人達はヒートアップしていきます。
一緒に楽しんでいいか、じっとしてた方がいいのか?
色々な葛藤が頭を巡ります。
無心になろう(心の声)
時折目をつぶる。
踊る患者、深まる謎と葛藤
円になって踊り回る女性達。
いつの間にか小屋の外には沢山のギャラリー(村人達)が。
把握ができない状況に、恐怖心が煽られます。
女性の一人が僕の手を取り、立たせます。
何か?(心の声)
一 緒 に 踊 る こ と に !!
彼女らの踊りは、肩ゆすりダンス。
必死にマネしようとするも、まるで壊れたロボットのようにしかできません。
なぜだ? なぜ踊らされるの?
冷え性を治してもらう患者なのだから。
患者が踊るなんて聞いた事も見た事もない。
謎と葛藤は深まるばかり!!!
驚異のトランス体験
皆で踊ったかと思えば座り、ゆったりとした歌が流れ、盛り上がって踊る。
1時間半は過ぎた頃、時はやってきました。
シャーマンが小さな壺を持って近づいてきました。
何かをいぶした煙のよう。
さっきまで一緒に踊っていた女性達が布を持って近づいてきます。
なんだ、なにが起きるんだ?!不安は最大限に。
そして・・・
飛ぶ!!を目の当たりに
かれこれ儀式は3時間は過ぎた頃・・・
隣りに座ってた女性に、シャーマンにより聖水がかけられると…
踊り子 : ぶるrぶrぶrぶr!!!(動き)
?!?!飛びました?!
トランスしました!!
内心ビックリしつつも、平常心を保ちます。
もはや何が普通で普通でないのかも分からなくなっています。ここで何時間も葛藤を続けている私の方が普通ではない気がしてきました。
次々とトランス状態に入っていく彼女ら。
私の見る限りでは特に怪しい薬を使っている様子ではありません。
単に人間とは現世の知識・常識・しがらみ・羞恥心がなければトランスできるものなのだと思います。
よく観察していると、トランスに入るキッカケを作っているのは友人Bati(バティ)くんが叩く太鼓だと感じてきました。
太鼓ソロが踊り子の心に火をつけ、音楽とトランスに引き込まれているのがわかります。これぞ太鼓と踊りの呼応!
太鼓というものが古来から宗教儀式や戦いなど、色々な場面で用いられて来た理由がここにあると思います。
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ここケニアでは音楽の総称を「ンゴマ」と呼びます。なぜ総称と書いたかと言うと、「ンゴマ」という言葉は、
踊りや憑依儀礼を含めたすべての総称。スワヒリ語には音楽のみを指す単語がないとか。もうそれだけでグッと来ますね!
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トランス状態の彼女達に皆が「Pole Pole(ポレポレ)(落ち着いて落ち着いて)!」と声を掛けます。
やはりトランスしっぱなしは危険なんでしょうか?というかそもそも
トランスという表現が間違っているのかも知れません。
現実に聖霊が彼らに降りてきているんだと思います。
「歌って踊って、楽しんで喜んで出て行ってもらう」超ポジティブな黒魔術
儀式の舞台は外に移ります。
何時間も経ったのに外は全然まだまだ明るい。
沢山のギャラリーが集まってきます。
しかし心は限界が来ていました。体力的にというより、葛藤が約4時間経っても払拭できていません。
もう十分だよと伝えたところで、本日のンゴマは終了です!
以前ここを訪れた日本人の友人は、次の日の朝まで踊り尽くしたと言っていましたから、止めると言わなかったら一体どうなっていた事か。
祈りはその思いが強ければ強いほど一種のトランス状態をともなったものと思われます。
おわりに
カヤンバ・ザ・ペポの儀式は聖霊に出て行ってもらうのですが、単に追い出すわけではない。聖霊を呼んで、一緒に歌って踊って、聖霊自身にも楽しんでもらって満足してもらう。
そして喜んで体から出て行ってもらうのだそうです。
トランス状態には一応科学的(というか心理学的に)根拠があって、トランス状態を生み出すには「共通認識のトリガー」が必要です。
この場合は太鼓が村の共通認識になっているのでしょうか。
自分が患者役なのは終わりにして、ホントは太鼓かカヤンバの楽器がやりたかったですよ〜!(さいごに心の声)
脈々と受け継がれているプリミティブな音楽。
しかしその伝統は少しずつ変化し消えて行く一路のようです。
口伝で伝わる伝統「ンゴマ」。消えて行く一路と書きましたが、そうならない動き、世界のテクノロジーもあります。
今は本当にネットで世界が繋がっていますからね。
私が今回の旅で上げたYouTubeなども皆さんの興味を引いて、現地に行ってみよう!と思ってもらえれば幸いです。
Hasta la próxima(また次回)!!
□ライター Zin ” Atrevido” Hitoshi
神奈川県横須賀市育ち。 ドラマー,パーカショニスト。
ブラックミュージックに傾向し、リズムのルーツを探る。2018年よりメキシコ移住。横須賀市久里浜でRAGドラムスクールを主催。 YAMAHA Popular Music School講師として、14年の講師活動。ドラムプロショップGATEWAYにてキッズスクール講師として10年の指導活動。
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