2018年春から「ラテンミュージックが自分のやりたい音楽だ!」とメキシコに移住した、ドラマーの Zin “Atrevido” Hitoshiさん。
Grooveを生み出す秘訣を探して、これまでアフリカや南米に渡航し、リズムの感じ方や考え方捉え方がまるで違う事を実体験してきました。
音楽は文化である以上、その土地、その街で生まれた背景が必ずあります。言語の違いはもちろん、人種,カルチャー、訛りもものすごく関係があります。
「音楽を知るという事は、文化を知ること」
音楽自体ではなく、音楽というフィルターを通して、色々な国の考え方やカルチャーショックを知る。
彼が彼自身を、音楽冒険家,Groove冒険家と名付けた理由です。
東アフリカのプリミティブな音楽に飛び込むリアル体験談。
現在滞在中の場所はケニアのマリンディ。
マリンディのある海沿いのエリアには広くミジケンダという諸民族が住み、ここケニアでの案内人俵さんより彼らの音楽が面白いという事で、ドゥルマ族の僕の師匠Saidi(サイディ)を紹介いただき、サイディの村に滞在してSengenya(センゲーニャ)と呼ばれるNgoma(ンゴマ。音楽,ダンスの総称)を学んでいる最中です。
ほんっと知らない横文字ばかりで頭がハテナ?になりますよね(笑)でも何とな~く分かってくれれば大丈夫ですからね。興味のある所から少しずつ。
ケニアの旅は、とんでもないカルチャーショックの連続です。
「人名」あお、 「地名」むらさき、 「民族名」オレンジ、
「音楽名」あか、 「楽器名」みずいろ、 「リズム名」赤ライン
旅のルート
1 | 【ケニア入国】旅の持ち物 |
2 | 【首都ナイロビ】ハードボイルドな日常 |
3 | 【首都ナイロビ~モンバサ(コーストエリア)】電気ガス水道がない村 | センゲーニャ |
4 | 【マリンディ村】黒いキャンバスに浮かぶ見える音 | ンゴマ・ザ・ペポ |
5 | 【マリンディ村】ついにラスボス登場!ンゴマ・ンネ |
6 | 【ゲデ村〜別の村】ギリアマ族の村に太鼓武者修業! |
7 | 【ツンザ村】河を渡る秘境への大冒険 |
8 | ??? |
行き先はTsunza(ツンザ)村。「音楽とともに旅をしている」と感じた瞬間。
一週間ほど滞在したホームマリンディの村とも、お別れです。
信じられないほど長く濃く、充実した毎日でした。
村での太鼓修業に付き合っていただいた Isa(イサ)さんはここでお別れ。
ここからの旅に同行するのはドゥルマ族の僕の師匠 Saidi(サイディ)と、日本語がカタコト話せる Bati(バティ)くんです。
荷物をすべて詰め、村の人達にお別れを言って、いざ出発です。
〜〜
庶民の足、路線バスを担うハイエースに乗り、世界的にも有名な観光都市 Mombasa(モンバサ)へと向かいます。
モンバサは目的地ではなく中継地点のようで乗り換えます。
Saidiがバイクタクシーを捕まえています。
僕の全ての荷物もあるので、2台。
小さな商店街を人を縫うように進んでいきます。
さすがの観光地というべきか、小さいながらも活気のある商店街。しかしなにせアフリカ。「世界的に有名な観光地」と言いつつも、観光客も訪れないようなこんな現地人向けの小さな商店街では雑多な人ゴミと土埃。
そんな中を僕らは進んで行きます。
商店街を抜け裏道を少し走ると、目の前がパッと開けます。
「うっ。眩し!」
僕らは今小高い丘の上。そしてそこから眼下にジャングル。これが蛇行か!というようなヘビ「河」が広がります。。
「おおおおお~!じ~~~ん(感動)」
素晴らしい自然の景色が広がる丘の上から、
今度は一気に丘を下っていきます。
ガードレールもない、細いただの土の道。
そうだ僕は今、一般道じゃない大地をバイクで移動しているのだ。
ほどなくすると船着き場へ。
乗るのは民間人用の船。
東アフリカの人は特に肌の色が黒いとのこと。そんな中、真っ白けの僕を自然に溶け込ませてくれます。
出航を待っていると仰天の光景が。
対岸に生活する方々の日常品と合わせて・・・
バイク?
バイクもこの船に乗せるの?しかも人力で担いで乗せようとしてるよ?!河に半分入ってるし!
別料金とか払ってるのかな?など色々思いながら見つめる僕。
乗客が満員になると出発です。
まさかバイクまでとは…。
晴れ渡る空のもと、のどかな河を僕らは流れていきます。決してキレイではない。
でもため息の出るような「これがアフリカ」と感じるような景色と空気に包まれていきます。
しばしの休息に浸っていると、対岸に到着しました。
汗と土にまみれながら、荷物をかついで丘を上がり、
またバイクタクシーを調達して、3度目の乗り換え。
これこそ普通の旅行者ではあり得なかっただろうシチュエーションです。
音楽とともに旅をしているからこそ、僕はここまでやってきました。
ホームマリンディを出てからすでに4時間弱。ついに今日の目的の村 「Tsunza(ツンザ)村」へ到着しました。
リズミックで踊れる「Zandale(ザンダーレ)」。楽譜では表せない現地の言葉での演奏に悔しい思いをしながら音に溶け込んでゆく。
「人名」あお、 「地名」むらさき、 「民族名」オレンジ、
「音楽名」あか、 「楽器名」みずいろ、 「リズム名」赤ライン
ツンザ村へ着くと、すでに演奏の用意がされていて、皆さんくつろいでいました。お茶とパンを頂いて僕らもしばしくつろぎます。
ツンザ村は恐らく僕の師匠Saidi(サイディ)と同じドゥルマ族。
太鼓の種類は、マリンディと同じようにンゴマ・ンネとチャプオが用意されています。
しかし僕の今回のお題はンゴマ・ンネではないようです。
皆さん、どれが楽器だか分かりますか?パッと見分からないですよね。
中心にある鉄のお皿がウパツ。その下に敷いてある左上のはウパツを良く鳴らすために使うヤシの葉の下敷きです。
となると。右側にズラリあるもの、こちらが今日の僕のお相手『カヤンバ』です!
カヤンバ
乾燥させた竹の茎を編んで(並べて?)、中には恐らく小石が仕込んであります。斜めにするとその小石が流れ、音的にはレインスティック的なサラサラ音が出ます。
しかしレインスティックと決定的に違うのはこれは「リズム楽器」であるという点です!
カヤンバ本体の上には固い竹がアーチ状に置いてあり、左右にする際、その竹を親指でHitするのです。パチッ、パチッという音がなります。
これがすごく難しい!手首を超ゆるゆるにして素早い動きで親指を竹にに当てに行く。僕なんか全然いい音がしないどころか動き自体も変な人になってましたからね(苦笑)
ここで我が友、Bati(バティ)くんのデモ演奏をご覧ください。
かなりバチッと音がしてしっかりリズム楽器であるという事が分かります。
カヤンバは踊りながらでないと上手くいきません。
演奏できるようになれば座っても何しても演奏できると思いますが、やはり体幹から来る動き,Grooveから流れが始まり、結果として手に伝達されるのだと僕は解釈しています。
ですので振っているうちにロボットみたいになる僕。ほんとGroove感ないんだなと痛感しますね。。。
さて、ツンザ村ではもうひとつの心配事がありました。
『Zandale(ザンダーレ)』と呼ばれるリズムです。
ザンダーレは聴いた感じ超リズミカルでカッコいい!感覚としてはLatinミュージックに出て来そうなダンサブルなリズムです。
しかし!聴くとやるとでは勝手が全く違います。そう、インターロッキングがまた僕の行く手を阻む!
無理やり言葉で説明を試みてみますね。
チャプオ1:ディギディカッッカッ ディギディカッッカッ
チャプオ2:ディギディンカッカッ ディギディンカッカッ
見た目ほぼ一緒ですよね。インターロッキングはそうやって似たメロディーをコールアンドレスポンスのように違ったタイミングで演奏し、トランス感を生んでゆくのです。
しかも!この『ディギディ』はテンポの頭ではないんです。
『カッッカッ』の方がテンポ。まぁそれでもチャプオ1の方はいい。
チャプオ2の入る位置がエゲツなさ過ぎる!!
この際テンポの事は忘れて単純に入る、これはできる。でもそうすると皆の取っているダンスのステップがひっくり返って見えるんです(苦笑)
これがアフリカマジック!!
かと言ってテンポを意識して入ると位置がエゲツなさすぎて入れない(泣)
しかも地元ツンザの人の演奏は現地の言葉で演奏しますからね。いわゆる楽譜に表せない表情「なまり」というヤツです。
同じザンダーレを演奏しているというのに全然気付かない僕。
見かねたSaidi(サイディ)が僕の修行ノートを持ってきます。ホラZin、思い出せ、ここに書いているやつだよ!と言わんばかりに。
しかし問題は楽譜ではないのである(苦笑)!
リズムやとチャプオ1,2のインターロッキングの構造は頭では完全に理解してる。でもそういう話ではないんだって!!(苦笑)
最終的にどうしたかと言うと、もう仕方ないのでひっくり返ったまま演奏しましたよ。悔しいのなんの。出した音は合ってるにしろ、みんなと共通のテンポでステップ踏めないんですから。
そうやって僕のザンダーレのチャプオ演奏は出来てはいても心は惨敗。
しかしそんな僕の気持ちを払拭するかのように遠くから音が聴こえてきます。
奥から大勢の人達が!
男性はカヤンバを持ち、女性は肩を揺らしながらやってきます。
も、もしかして僕らのためだけにこれだけの大人数?!ゆうに30名はいます!
村をあげて準備をしてくれていたのでしょうか?!
数十分も演奏してるうち、Saidi(サイディ)師匠がチャプオを僕と交代。
Saidi師匠の目線が僕にそう告げていました。
もちろんカヤンバの演奏はヘタクソそのものでしたが、
カヤンバを持っての村の方々との演奏は超楽しかったです!
とにかくこの空気感がヤバい!
雰囲気は完全に「ウルルン滞在記」や「こんなところに日本人」です。
男性と女性に別れて向かい合い、笛の号令と共に近づいて行くというのがまたかわいらしいですよね!なんか小学校の頃のフォークダンスを思い出してしまいました。好きな子の番が来るとやたらテンションが上がるやつ(笑)
こうやって村の中で愛が育まれていくのでしょうね♪
アフリカにいる、大地と自分がひとつになっている。生涯忘れられない「最高の露天風呂」とは
ツンザ村での演奏が終わり、村の方々と挨拶。
最後にSaidiが食料をいただいています。
「カニだ!!」
「カニっ食~べいこう~♪ by Puffy」
テンションMAX(笑)
ここコーストエリアは海沿い、なおかつツンザは河を渡ってきたので、淡水も海水もあります。本当に色々な種類の海や河の幸があるのでしょう。
村人に案内されて今夜の宿へ。
宿といってももちろんホテルや民宿などではありません。村人の家の一室をお借りするようです。
さ~て、今夜はごちそう。カニカニ♡
う~ん、仕方ない。明日の楽しみにしましょう!
蚊帳を張って、すでに準備していただいていた夜ごはんをいただきます。
さ・て・と。お風呂!お風呂はどうかな~?
Saidiの村ではバケツに水を汲んでお手洗いで浴びてましたからね。覚悟はしています。
Batiくん「Zinさん、シャワーは外のその辺デ。」
マジかっ(笑)!
一応温かいお湯を作ってくれています。う、うむ、外で単にお湯浴びね、うん、うん。。
懐中電灯片手に着替えを物色。
暗い部屋を出て外に出ると、より一層の真っ暗闇。。。
しかし待てよ?しばらくすると目が慣れて来ました。
「うわっっ!」
上を見上げると、そう、満天の星空です。
「なんなんだこれは。この開放感。今まで味わった事がない。ああそうか、今アフリカにいるんだったな。大地と自分が今、ひとつになっている。」
「音楽を知るという事は、文化を知ること。」
汗まみれになりながらバイクで一般道じゃない大陸を移動すること。民間人用の船に乗ったこと。
単に音楽を教えてもらうのではなく、30名近くの演奏者と踊り子、そして村中の人が集まっての体験型修業をすること。
何の囲いもないお外でスッポンポンになっていること(笑)
この瞬間をキッカケに、心に思いました。
僕は僕自身のことを「音楽冒険家」と名付けよう、と。
音楽というフィルターを通しているからこそ、色々な国の考え方やカルチャーショックを、一般の観光客では知りえないレベルのディープさで知ることができるのです。
音楽は文化である以上、その土地、その街で生まれた背景が必ずあります。言語の違いはもちろん、人種,カルチャー,訛りもものすごく関係があります。
僕はそれを知りたいし、
やはり「行かなきゃ分からない。行けば分かる」というのは間違いないという事。
恐らく一生忘れられない生涯最高の露天風呂でした。
□ライター Zin ” Atrevido” Hitoshi
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【LoFi Hiphop BGM】流れるイオタ『黄昏を駆け抜ける』 (Official Album Video) – Driving through the twilight
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