【アフリカの旅 Mbuguni編】| アフリカのリズムに酔いしれて、マリンバ演奏体験!リズムの構造とアイデンティティーとは?| リズム音楽世界旅紀行~ケニア編⑧~

東アフリカのプリミティブな音楽に飛び込むリアル体験談。

現在滞在中の場所はケニアのツンザ村

ケニア海沿いのエリアには広くミジケンダという諸民族が住んでいます。
「9つの町」の意味を持つミジゲンダ(Mijikenda)。9つの民族の総称です。
ケニアでの案内人、俵さんよりドゥルマ族の師匠 Saidi(サイディ)を紹介いただき、現在 Saidi(サイディ)と、日本語がカタコト話せる右腕の Bati(バティ)くん、僕の3人で音楽修業の旅へ出ている最中です。

文字通りの”旅”。音楽という媒体を通しているからこそ入って行けるディープゾーンと体験の数々。

 

さて、前回のお話「河を渡る秘境への大冒険」より本格的な旅。遠征修業が始まりました。

すべての荷物をバックパックに詰め、バイクタクシーを使ってのディープな旅の続きをお届けします。

今回ケニア編第八弾。
10話に収まりきる自信がありませんが、それほどに濃い旅の顛末をお楽しみ下さい!

 

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旅のルート

1 【ケニア入国】旅の持ち物
2 【首都ナイロビ】ハードボイルドな日常
3 【首都ナイロビ~モンバサ(コーストエリア)】電気ガス水道がない村 | センゲーニャ
4 【マリンディ村】黒いキャンバスに浮かぶ見える音 | ンゴマ・ザ・ペポ
5 【マリンディ村】ついにラスボス登場!ンゴマ・ンネ
6 【ゲデ村〜別の村】ギリアマ族の村に太鼓武者修業!
7 【ツンザ村】河を渡る秘境への大冒険
8 【ムブグーニ村】驚愕のマリンバ
9 ???

 

チャプオ作りの名人を訪問。楽器の製作現場とは「愛を知る事」。

*アフリカの言葉がたくさん出てきますので、この先は色分けガイドと共にお読みください。

「人名」あお、 「地名」むらさき、 「民族名」オレンジ、
「音楽名」あか、 「楽器名」みずいろ、 「リズム名」赤ライン

 

昨晩のツンザ村での30名を超す村をあげての体験型修業。
その興奮が冷めやらぬままの起床です。
荷物のパッキングを終えると、朝ごはんは別の場所だと案内されます。

虎のシャツに奇妙な帽子の案内人。色々な事がマヒしてくる(笑)

 

小さな集落に到着。朝ごはんはすでに用意されていました。

 

ポットで沸かしたコーヒーとチャパティー。
チャパティーと言えばインド。やはりインドと繋がりが?

しかし世界地図で見てみるとインドとケニアには地理的にかなりの開きがあります。
海路でやってきたのでしょうか?由来を想像するとロマンがありますね~♪

味ですが、見た目のシンプルさからは想像できない美味しさでした♪

 

しかしここの集落に来た本当の目的は、朝ごはんではなく『チャプオ作りの名人』に会うためのようです。
ミジケンダミュージックをディープに知る事ができる、本当に豪華な体験です。

 

こちらのムゼー(長老)が『チャプオ作りの名人』。う~ん、風格がすごいです。

太鼓作りをしているからか、ご年齢の割に筋肉質!

 

チャプオ作りについてのレクチャーもしていただき、ゆったりとした時が過ぎます。

製作現場に来て、製作者にお会いし、作られる過程などを見聞きすると、俄然楽器の存在が近く感じられます!

楽器の製作現場を知る事とは、「その楽器とより近くなる。より理解する。愛する事と感じました。

 

とても有意義な時間が過ごせました。

ムゼーと村の方々に丁寧にお礼を言い別れを告げます。

 

そしてアドレナリンMAXな旅は続く!!

 

Saidi師匠
さぁ、バイクタクシーだ! 今回はオフロード車を用意した!
Zin
(心の声)分かった分かった、いつものバイクタクシーでしょ?
オフロード車っていっても変わらな・・・
ってヲ!ヲイヲイ!こんなところ入って行くの?!

 

なんとバイクは森の中を猛スピードで駆け抜けます!!

木に激突すればそこで試合終了!無茶苦茶です。

Saidi,Bati,僕を別々に乗せた3台のオフロードバイク。
競い合うように森の木々を縫い、崖のような下り坂も物ともせず突き進んでいきます。

「な、なんなんだ、この体験は。。。ちょ、超楽しいじゃないか♪♪♪」

すでにご想像かと思いますが、僕はむしろ危険は大好きな部類!!
そこでビビるわけがありません!(笑)

キテるゥゥゥゥ。このアドレナリンMAX感が、心地いいィィィィィ(JOJO風)!!!

バイクの後部座席でニッコニコの僕(笑)

 

30分近く走ったころ、

バイクを降りました。

森を抜けると、ちょっとした草原です。
 

Saidi師匠
ここより先はバイクではいけない。目的地、Mbuguni(ムブグーニ)村までは歩きだ。行くぞ。

これからどこへ向かうというのだろう。大地を感じ、遠くを眺める。

俵さんからいただいたチャプオがお供です。

俵さんの住んでいたGede村で習った「Kagongolo Vilalu(カコンゴロ・ヴィラール)」という曲があります。
◉カコンゴロは「ヤスデ」という意味。写真の虫(ヤスデ)は大きいですが、日本で見る小さいヤスデがカコンゴロです。
◉ヴィラールは「狂った」という意味との事。
「狂ったカコンゴロ」。虫の歌なんて面白いですよね!

風通しのいい家の横を抜けていきます(笑

 

Mbuguni(ムブグーニ)村。おもてなしとおもてなしとおもてなし(笑)

草原を歩くこと約1時間。今日の目的地、Mbuguni(ムブグーニ)村に到着
村の方々が出迎えてくれます!

暑かっただろう?とココナッツジュースを用意してくれました。
「自然の恵み」に感謝♪ すべてタダで手に入りますからね。

Saidi(サイディ)が昨日手に入れたカニを村の人に渡します。何でもこのムブグーニにはSaidiの師匠が住んでいるとの事。それはそれは大切な村なのでしょう。

 

村人「俺達もごちそうの用意があるよ。」


ジャーン!!

現われたのは海ヘビです!

 

ををを!何とも豪快に折りたたんで干してあります!

これは素晴らしい昼食になる事間違いなし♪

 

カニと海ヘビを調理している間に、Saidi師匠が耳打ちしてきます。

Saidi師匠
Zin、金持ってるか?ちょっと村の人達に酒をお願いしようと思ってるんだ。
別料金になってしまうが皆ノリノリになって演奏してくれるに違いない。
Zin

な、なるほど(笑)

いいよいいよ

 

お金を渡すと、村人がルンルンでどこかに消え、しばらくするとプラスティックのガソリンタンクを抱えて戻ってきました。

パームワイン♪

太鼓の上に鎮座しているのがパームワイン。おじさんの手前にあるガソリンタンクみたいのにたんまりと入っています。

 

パームワインはヤシの樹液が自然発酵して出来るお酒で、

ヤシの木に傷を付けて樹液を採取します。

発酵して出来るので自然の炭酸が含まれていてちょっとピリッときます。

器もヤシの中をくり抜いたもの。う~ん、いい感じ♪

 

しかし…、喉が乾いたらココナッツジュース、お腹が空いたらバナナ。酒が飲みたくなったらパームワイン。

これじゃあ「アリとキリギリス」になるのも当たり前かなぁ。最悪な~んも働かなくても生きてはいけますからね。

 

昼間っからやりたい放題(今日だけである事を願いつつw)

リラックスしていると来ました来ました!念願のランチタイムです。
沢山歩いたからお腹空いた~♪

めっちゃおいしそ~なカニ♪茹でた感じですね。スープの味も格別!もちろんミソまですべてたいらげます♡

左に見える白い塊はここケニアの主食「ウガリ」です。日本のご飯にあたるもの。
トウモロコシ等の穀物を乾燥、粉にして、お湯で練ったものです。

左:ごちそうを食べてますますリラックスが加速する(笑)右:ご満悦のBatiくん

 

その村の音楽の名は「Marinba(マリンバ)」

*アフリカの言葉がたくさん出てきますので、引き続き色分けガイドと共にお読みください。

「人名」あお、 「地名」むらさき、 「民族名」オレンジ、
「音楽名」あか、 「楽器名」みずいろ、 「リズム名」赤ライン


ごちそうとパームワインですっかり皆上機嫌になったところで、そろそろやるかと『太鼓の準備』をし始めました。

こちらの村で演奏される音楽の名前はMarinba(マリンバ)

僕らが知る楽器のマリンバと関係があるのでしょうか?

こちらは太鼓で、あちらは木琴だしメロディー楽器。
綴りも若干違うし。いや、でももしかしたら…。

仮説ですが、リンバが音の連なり→複数形でがついて=マリンバって説もあるらしいです。
もし本当なら素敵なネーミングですよね!

 

使用する太鼓はいつもの両面太鼓のチャプオではなく、ンゴマ・ンネでも使った片面太鼓のBumbumbu(ブンブンブ)Vumi(ヴーミー)
この村でのソロ太鼓はこちら!Ndunguri(ンドゥングリ)です。

ンドゥングリ。強烈な個性を放っています。右手前がンドゥングリで奥がブンブンブかヴーミー。

た、確かにンドゥングリむっくりした形(失礼)。

冗談はさておき…、と、なんだこれは!

彼はSaidiの師匠の息子さん。右手に持っているのは…、

使い終わったガスボンベ!
ガスボンベに棒を差し込んでマラカスのようにシャカシャカと振っています。
中には小石が入っているのでしょうか?

この楽器の事は『Mayanga(マヤンガ)』と呼ばれていました。

 

では次に左手を見て下さい。

驚くべきことに、ただの棒です(笑)!
 

Zin
(心の声)なんなんだ、そのアイデンティティーは(笑)!!

しかし、そして注意深くその意味を探っていきましょう。

ただの棒を振っても音楽的な意味は何もありません。しかし必ず一緒に振っています。
観察を続けるとマヤンガを振る人は必ず「立って演奏」しています。

ツンザ村カヤンバと同じように体幹を使って踊りながら演奏する楽器なのです。

ブラジルのガンザというそろばんのような振り物の楽器もそうですが、
この「振り物楽器」というのは体全体でGrooveする事で音にノリと命が吹き込まれる
と僕は思うのです。

 

試してみれば一目了然。

これから ①片手だけ振って、②その後両手を振ってみて下さい。

体全体にくる衝撃や揺らぎが全然違う事が分かってもらえると思います。

それを立ってヒザも使って振ってみると体全体が楽器のひとつとなってGrooveする事が分かってもらえると思います。

棒なんか振っても意味はない?いや、両手で振る事に意味が、Grooveが120%存在するのです。

楽しさも全然違う♪

Zin
(心の声)しかしただの棒とは、ね(w

 

実際の演奏編

この村の音楽、Marinba(マリンバ)は、かなり特殊です。
何曲か演奏していると演奏の構造が見えてきました。

それは途方もなく楽しい経験でした。

用意するのはマラカス的なマヤンガ5台の太鼓
音程を調整して「低音から高音までちょっとずつ違う」太鼓を使用します。

 

◆ベーシック(何曲やってもリズムが変わらない楽器)

Mayanga(マヤンガ)
例のマラカスですね。4:3のリズムを演奏(ビデオをご参照ください)。この4:3は以前コンゴで使われるという話を聞いていたクラーベ(核となるリズム)と同じです。まさかケニアでお目にかかるとは。

Mbitsi(ムビツィ)
最も低音の太鼓。リズムをひらすら死守!これこそがマリンバの特徴だと言うべきリズム

「クニビツ クニビツ…」

をひたすら叩く。このクニビツもよ~く聴いていると「クンニビツ」に近いかな?
こういうのを口伝。言われたままのイントネーションと訛りで演奏しないと混ざっていけません。
西洋式スクエア(真四角)のリズムに当てはめると違うのです。「ワタシハ宇宙カラ来マシタ」的なロボット的なリズムが出るだけ。「せやな~、はよせぇやぁ~」みたいなニュアンスにはなりえないのです。

Ndondo(ンドンド)
下から2番目の音程。「パドゥ パドゥ」というリズムをひたすら死守!

 

◆曲によって変化する系

Vumi(ヴーミー)①,Vumi②,Gandu(ガンドゥ)
ここから上の音程の楽器はリーダーが曲が変わるたびに指示して少しずつ変えていました。
僕の受けた印象では、毎回リーダーが違うリズムとメロディーの組み合わせを考えている感じでした。
ここが今まで習ってきたケニアの音楽と決定的に違うところ。
いわゆる即興作曲に近い考え方です。マイルス・デイビスかっ!

 

◆そしてソロを奏でるリーダー格。

Ndunguri(ンドゥングリ)
各楽器のリズムを指定したリーダーが最終的に入ってソロを叩いて行く。これがこの楽器ンドゥングリです。
これはSaidi師匠からのちほど聞いた話なのですが、ソロを取る時の秘密は「他の楽器のパターンを真似て入っていって、少しずつソロを足していく」との事でした。
例えばガンドゥのパターンを真似て使いつつ変化させていく。もしくは真似るパターンも入るタイミングを変えて入って行けば立派なソロに聴こえると。
言ってる意味は分かりますが、かなり高度なテクニックですけどね!
ただ言える事は、ソロというのは何の脈絡もなくテキトーにやっているものではなく、かなり頭脳的にやるものだという事は間違いなさそうですね。
「ミュージシャンは頭が良くなくてはいけない」と聞いた事がありますが、僕もその通りだと思います。

さて、ここまでMarinba(マリンバ)についての解説をしてきましたので、実際の演奏の映像をお楽しみ下さい♪

映像でも感じたかも知れませんが、楽し過ぎて僕の顔が笑いっぱなしです♪

ほんとこのマリンバは何のプレッシャーもなくただただ楽しい時間でした。

 

ノンストップの夜中まで、そして朝も早よから叩き初めの叩き起こし!あり得ない!

楽しい楽しい。ほんと楽しい。。みるみるうちに夜は更け、焚き火を焚きながらの演奏は続く。

続く続く…気が付いたらもう夜中です。

始まったのが15時くらいで、今23時ですから、えっと…もう8時間?!

途中少しずつの休憩はしたとはいえ基本的に演奏しっぱなし。

 

Saidi師匠
眠いなら寝ていいぞ。テントの用意をしよう。

ここで初めてテントを張ります。日本からはるばる持ってきたテント。ついに使う日が!

早速張って中に入ります。

Zin

ふ~、やっと一息つける。楽しかったとはいえさすがに疲れたな。…ってまだ彼らはやってるぞ!!

ここから僕が眠りにつくまでの1時間程度は演奏していました。そこから先は記憶がないのですが、恐らく続けていたでしょう。

朝のチャプオ作りの名人のお宅からバイクタクシーに乗り、さらに1時間以上炎天下で歩き、そっからのパームワインと長時間の演奏。深い眠りにつきました。

しかし、どこからか、いや確実にその音は聞こえてきます。

クニビツ クニビツ クニビツ クニビツ クニビツ クニビツ クニビツ

ん?僕は寝たぞ?どういう事だ?

そういう事か?!

皆が寝静まったのが恐らく1時として、誰かが5時頃目を覚ましました。
そして太鼓をまた叩き始めたのです!

そこに続く眠りから覚めた村人達…。まるで目覚めたゾンビのように次々と演奏の輪が広がっていきます。

寝る最中も生演奏に包まれ、そして生演奏で起こされる。

こんな体験は後にも先にもこれ一回しかありません。
音楽の底知れぬパワーを目の当たりにしました。

僕も起きあがり演奏に加わる。。

 

こんな素晴らしい体験ずくめのMbuguni(ムブグーニ)村
演奏は何の使命感もストレスもなく、ただただ楽しい体験でした。

こんな毎日が濃すぎるミジケンダの旅もついに終わりが近づいてきました。残り2日です。
どんな旅の顛末になるのかお楽しみに!

Hasta la próxima(また次回)!!

 

□ライター Zin ” Atrevido” Hitoshi

 

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