【アフリカ】黒いキャンバスに浮かぶ見える音 ンゴマ・ザ・ペポ |リズム音楽世界旅紀行~ケニア編④~


東アフリカのプリミティブな音楽に飛び込むリアル体験談。

現在滞在中の場所はケニアのマリンディ

マリンディのある海沿いのエリアには広くミジケンダという諸民族が住み、ここケニアでの案内人俵さんより彼らの音楽が面白いという事で、ドゥルマ族の僕の師匠Saidi(サイディ)を紹介いただき、サイディの村に滞在してSengenya(センゲーニャ)と呼ばれるNgoma(ンゴマ。音楽,ダンスの総称)を学んでいる最中です。

ほんっと知らない横文字ばかりで頭がハテナ?になりますよね(笑)でも何とな~く分かってくれれば大丈夫ですからね。興味のある所から少しずつ。

ケニアの旅は、とんでもないカルチャーショックの連続です。

 

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旅のルート

1 【ケニア入国】旅の持ち物
2 【首都ナイロビ】ハードボイルドな日常
3 【首都ナイロビ~モンバサ(コーストエリア)】電気ガス水道がない村 | センゲーニャ
4 【マリンディ村】黒いキャンバスに浮かぶ見える音 | ンゴマ・ザ・ペポ
5 ???

 

*アフリカの言葉がたくさん出てきますので、導入部は色分けガイドと共にお読みください。

「人名」あお、 「地名」むらさき、 「民族名」オレンジ、
「音楽名」あか、 「楽器名」みずいろ、 「リズム名」赤ライン



ケニアのンゴマ(音楽)は湿った音?

皆さんこんにちは。Groove冒険家のZin “Atrevido” Hitoshiです。
ケニア編第四弾。前回からついに始まった音楽修業編からの続きです。

さて、僕の学んでいるSengenyaで使われるベースになる楽器、Upatsu(ウパツ)Chapuo(チャプオ)について前回触れましたが、軽くおさらい。
ウパツと呼ばれる金属製の皿や缶をその辺の木で叩き(笑)テンポとGrooveを作り、チャプオと呼ばれる両面太鼓を2台もちいて、ベースになるメロディーを編み込んで行きます。そうそれこそ文字通り編んで行く感じ。それを「インターロッキング」と呼んでいます。

特にSengenyaには5拍子の曲があり、その入れ子式のリズムが

「これな~に?」「な~にこれ?」

とお互いに会話し続けるわけです。そのトランス感たるや!

(Upatsu(ウパツ。左)とChapuo(チャプオ。右)



太鼓類をもちいてメロディーというのはなかなか珍しいと思いますが、Sengenyaでは音程・メロディーが重視されます。

演奏前に念入りに音程をチェックし、演奏中も音が変わってくると水で濡らしたり皮の真ん中をバン!と叩いてピッチ(音程)を調節します。
ここアフリカはケニアの太鼓は作りがとても原始的な事、そしてアフリカの暑さゆえに太鼓の皮が乾いてどんどん音程が変化していくんですよね。
逆に雨も多いです。亜熱帯ですからね。そしてここケニアの案内人、俵さん曰く

「ケニアのンゴマは湿った音がする」

との事。言われてみると確かにカラッと乾いた音のする西アフリカに代表されるDjembe(ジャンベ)と比べると対照的。それぞれの善し悪しがありますが、確かにこの湿った音、逆に個性も強くてクセになる感じですね~

 

 

ちょっと余談ですが、上記の写真の白っぽい木の棒。
これでウパツを叩くのですが、確かにその辺で拾ってきた木の棒ですよね。動画では叩いてる最中に折れてますし!

アフリカじゃなくアメリカでもそうでしたが、日本人ドラマーはスティックを買うのに量りを使って左右の重さを同じにし、曲がってないかをチェックする。

果ては自分の頭を叩いてピッチをチェックする。

これが大笑い物のギャグになるんですよね。なんなんだ?日本人のアイデンティティーは?と。

僕らは至って大マジメ。より良い音で演奏したい。ただそれだけです。でも実際にいい音を出す人は何で演奏してもいい音出しますからね~。

要は「入口に拘るか、出口に拘るか」、でしょう。

 

また、日本人の道具に対する拘りは世界一でしょうね!

だからこそ戦後の日本は飛躍的に成長し先進国の仲間入りを果たした。

楽器に関してもいい楽器を買いたきゃ日本に行け!と言われるほど、海外から買い入れたものを含め日本にはいい楽器,道具が揃っています。音響機材も録画機材も世界一です。

それでもなお良い音とされる音楽のミックスはアメリカだったり諸外国だったりします。

 

NYに住んでいた僕の友人がグラミー賞を取ったミキシングエンジニアさんのスタジオに行った時の話。

そのスタジオには友人の持っている機材より安い機材しか置いていなかったとの事。

入口と出口。どんなにいい入口(機材)を持っていても出口(イマジネーションと耳)がなければ宝の持ち腐れになるのだという事をハッキリと露呈していますね~。

やはり出口を磨きたいものです。

村の子供たちと

特にアフリカ発祥の音楽はこのテンポがワケ分からん!てなるのが面白い!

さて、ウパツチャプオのベース楽器を使って様々なミジケンダの曲を学びました。
5拍子」という大変不可解な曲に圧倒されましたが、他の曲はちゃんとシンプルに4/4拍子です(安堵)。
それでもなおインターロッキングは健在。おお~なるほど!と思うロックやポップスでもよく聴くリズムもあり、色々な関連性を想像すると面白くなります。
特に僕らの聴くロックやポップスは西アフリカのリズムの影響が色濃いですから、東アフリカであるケニアの音楽にも関連性があると思うと。

どこの国であれ、人が衝動を受けるリズムというものは共通するものがある

のかも知れませんね。

◉ 譜面化するのがナンセンスな理由とは?


次に、プリミティヴ(原始的)な音楽に対し、「譜面化」する事がナンセンスな理由にも触れておきましょう。

それこそ教えてもらうリズム・メロディーは口伝です。まぁそれが歌だとすると当然口伝ですよね。「さくらさくら」を教える時譜面は用意しませんからね。
日本の音楽、いや僕の住むメキシコやヨーロッパ発祥の音楽も含め、アフリカ源流の音楽との大きな違いは文化土壌以外にもリズムの観点から明らかな違いがあると思っています。

ちょっとピッタリな言葉が見つからないので誤解を招くかも知れませんが、まぁ僕の一個人の意見という事でご容赦を。



例を出してみます。
先の例に出した「さくらさくら」、そして日本の代表曲「アンパンマンのマーチ」「世界に一つだけの花」(笑)
これら一見ジャンルの結び付きはありませんが、歌い出しはテンポ1からなんです。

◉「さくらさくら」

◉「アンパンマンのマーチ」

◉「世界に一つだけの花」



逆にアフロアメリカンの例をいくつか。

◉「Moanin’ -Art Blakey & the Jazz Messengers-」

◉「Boogie Wonderland -Earth, Wind & Fire-」

◉「(You Make Me Feel Like) A Natural Woman -Aretha Franklin-」

テンポ1からじゃないところが歌い出しの傾向が強いですよね。
必ず!とは言えませんがそういう傾向が強いです。
例えばですが、宇多田ヒカルさんとかはこのアフロアメリカンのリズムの取り方の傾向が強いと思いませんか?宇多田さんが初めて出てきた時の衝撃はすごかったですよね!そして皆がカラオケで歌って、なんじゃこの歌詞の切り方は~!全然歌えん!ってなったはずです。
現代はさらにインターネットが発達したおかげで世界中がリアルタイムでミックスされ進化していってますよね!素晴らしい事だと思います。

そして有名な曲、印象的な曲というのはこのOn the beat(オモテノリ)Off the beat(ウラノリ)をうまく使い分けているように感じます。
このビートのオモテとウラに関してはまた別の機会に触れる事にして、例えば最後の例の曲
「Natural Woman」のサビはこうですね。

「You make me feel. You make me feel」

しかし譜面にしてテンポ1から考えるとこうなります。

「Feel you make me. Feel you make me.」

歌詞の意味が通じませんね。

分かりやすく説明すると、こういう感じです。
特にアフリカ発祥の音楽はこのテンポがワケ分からん!てなるのが面白い!
そこに僕はGrooveを感じるのです♪

*アフリカの言葉がたくさん出てきますので、再び色分けガイドと共にお読みください。

「人名」あお、 「地名」むらさき、 「民族名」オレンジ、
「音楽名」あか、 「楽器名」みずいろ、 「リズム名」赤ライン

 

このケニアの音楽、分かりやすいウパツの例をひとつ上げましょう。

「OK、Zin。Ngoma the pepo(ンゴマ・ザ・ペポ。ある一曲)ウパツはこうだ。
カラカ カラカ カラカ カラカ…」

しかしすでにこのマジックに耐性のある僕は知っている。これはテンポ的には「カラカ」ではなく「カッカラ」であるという事を。。。


案の定テンポは「カッカラ」であったが、ここで歌ってみて欲しい。

「カッカラ」をひたすら速く歌うのと「カラカ」を早く歌うのとでどっちが歌いやすいか?
他の例を上げると「とんかつ」と「かつ丼」(笑)
速さも歌いやすさも、そしてその意味さえも変わってしまうのです。

「かつ丼はご飯の上にカツが乗ってるんだってぇ!!分からんヤツだな!」
みたいな(笑)

だから譜面に直してはいけないのです。譜面にすると1から読んでしまうので、意味やイントネーション、ニュアンスが変わってしまいます。

でもまぁ、そこもしっかり理解した上で譜面を使うのは良い!と僕はしています。やはり早く覚えるのには便利なツールですからね。僕の場合は譜面を起こした上でどこが始まりかをしっかり意識するように心がけています。
しかし未だに本人達のニュアンスにはなりませんから、やはりやってはいけない事、間違っているのかも知れませんが。。。。


そして楽器奏者的に言うと「手順」もノリやスピードに関係してきます。
 
ドラマー的に西洋のセオリー通りこのリズムを解釈すると、叩く手順は「RLR RLR」の繰り返しになります。これが一番正しくテンポもノリもキープされる最善の手順と位置付けられています。
※ R=右手で叩く L=左手で叩く
 
しかし彼らは違います。

「カラカ(RLR)ラカラ(LRL)」

順当に左右順番!何も考えず生まれたまんま、そのまんま!

この2つ、西洋セオリーの手順「RLR RLR」と彼らの「RLR LRL」とでは本当に大きく違います。
まずスピード。彼らの手順であればかなりの速さで演奏できますが、西洋セオリーではその速さまで到達できません。
そして出る音のニュアンスが本当に違う!
西洋セオリーはキレイにきっちり。粒立ちもよく四角いリズムの箱にきっちりと収まります。
一方で、彼らの叩き方はというとリズムはヨレたい放題です(笑)
違う言い方をするとニュアンスがつけ放題!
だからこその叩き手によっての歌わせ方、村や民族によって歌わせ方がちょっとずつ違うのです。
これも「口伝の産物」と言えるでしょう。大阪弁と神戸弁を一緒にするな!みたいな?
違いは大阪弁,神戸弁ほどハッキリとはないでしょうが、イメージは、していただけましたね?
新宿っ子と渋谷っ子を一緒にするな!な~んか、「ろくでなしブルース」の抗争を思い出してしまいました(笑)

ここの例に出ているNgoma the pepoという曲も、ドゥルマ族ギリアマ族とでちょっと違うらしいですよ~。当然と言えば当然ですが、面白いですね!
主食であるウガリ(トウモロコシの粉を練ったもの)を作っているところ

黒いキャンバスに浮かぶ見える音。

ある日の夜の事、外で子供達が太鼓を叩いて歌っている音が聴こえます。

これは面白い!チャンスだ!とばかりに部屋を飛び出した僕。
しかし明かりは何もない。月もない。ただひたすらに真っ黒いキャンバスの中から子供達の奏でる音楽と楽しげな声だけが聴こえてくるのです。
ただひとり文明の利器、懐中電灯を持って音に向かって進む僕。

見えてきました。暗闇の中に浮かぶ子供達。
何と叩いていたのは太鼓ではなくポリバケツです。ポリバケツを木の棒と手で叩いてリズムを作りだし皆で歌っては踊っているのです。
僕の懐中電灯の光に気が触れたように騒ぎ、さらにヒートアップ!さながら光におびき寄せられる場末のディスコクラブです(笑)

 

光を浴びてノリノリ!
「懐中電灯はスゲーぜ!もう俺のもんだ」ばりの表情



この暗闇から聴こえる音体験が、今後の僕の音楽人生を大きく変える事になります。

毎日のスケジュールはこんな感じ。
✔︎朝7時起床
✔︎レッスン
✔︎朝食
✔︎レッスン
✔︎昼食
✔︎レッスン
✔︎夕食(笑)

ひたすらレッスンの日々。完全に合宿モード。一日に大体7時間ほどはレッスンでした。


ある日の事、たまには休息を取りたいと申し出、近くのリゾート地Watamu(ワタム)へ。
約1日丸々遊んで帰ってきた時、Saidi師匠が一言。

「Zin。今日は何もしていない。もう暗いが今から少しレッスンするぞ!」

さすが鬼師匠(笑)!完全には休ませてくれません。。。

そしてレッスン開始。辺りはすでに暗くなりつつありました。
見えるのは僕の蚊取り線香の灯りだけ。
そしたら来たんです。

ゴバァァァァッッッ!!
何なんだこの感覚はァァァァ!気持ち悪い!いや気色悪いィィィィィィ!(JOJO風にイメージして下さい)」

真っ黒なキャンバスの中から音だけ飛んでくるんです。ステレオで。
その日も月はなく、自分の手すら見えないんです。
だから自分が演奏しているはずなのに自分が演奏しているという確かな確証がない!
何となく自分の手は動いていて、太鼓を叩いているだろうというイメージだけです。

た、試しに手を止めてみるか?いや、しかしもし本当に音が止まったとしたらこの世界が止まる。闇の彼方に葬られる。戻ってこれる確証は・・・ない。

断っておきますが、ドラッグの類いはしてませんからね(笑)!
でもこの感覚は本当に初めての体験。
ここケニアにはPepo(ペポ)と呼ばれる精霊が住んでいます(Ngoma the pepoはそのペポを祭る歌です)。
そのペポが降りてきたという感じ。うわァァァァァ!ゾゾゾゾゾォォォォ!って感覚です。



今までも目を閉じて練習したり演奏したり、そういう事はしていました。
何しろ音楽は「音」ですからね。視覚が聴覚を遮るという感覚は理解してもらえると思います。
レイ・チャールズ,スティーヴィー・ワンダーに代表されるように視覚障害者が素晴らしい音楽を奏でるイメージもあります(もちろん彼らの類い稀なる才能がすべてですが!)。
実際に目を閉じて演奏するとよく音が聴き取れます。


しかぁぁぁぁし!!
目を開けているのに見えないというのはまた別次元ンンンンンン~!!!
視覚は使っているのに見えない。いや、見えている?!そう俺は見えている!音が見えている!音が!音ぐわァァァァァ ぐふォァ!!(JOJO風にイメージして下さい)


そうなんです。目を閉じて聴こえるものとは全く違うものだったんです。
うまく説明できるか分かりませんが、閉じるという行為は閉ざす,止めるという行為。
それに比べて視覚を使おうとしているのに闇しか見えないというのは、さながらそこに出ている音を見ている感覚だったのです。

聴力+視力=2倍のスタンド能力(笑)!ガンダム的に言うと3倍(笑)?!
聴力の感覚だけ研ぎ澄まして1.2倍にする感覚より遥かに上のものが文字通り、見えました!



日本に帰ってからそれを実験!部屋の電気を真っ暗にし、ドアのガラス面から漏れる廊下の光もベースアンプや服でシャットアウトし。
あの時のケニアの感覚にかなり似ている!思い出す!

震えるぞハート!燃え尽きるほどヒート!

って感じです(笑)
すみません、最近JOJOにハマっているもので(笑)


僕がやっているドラムのレッスンでも子供達と実験!
名付けて「暗闇レッスン」(笑)!
子供達大喜びでおおはしゃぎ(笑)
さておき、効果のほどは間違いありませんでした!確実に皆上手くなります!
「ねぇ先生、今日も暗闇やろうよぉ。あっちの方がうまく叩けるからぁ。」とおねだりしてくる始末(笑)

音楽をやっている皆さんはぜひこの「暗闇演奏」、試してみて下さい!



一時日本に話は戻ってしまいましたが、まだまだこの新境地の連続「ケニア編」は続きます!
では今日はこの辺で。

←To Be Continued (また次回。By JOJO。チャンチャン)!!


ケニアンカルチャーを垣間見る驚きの話⇨「歌う音」を奏でる打楽器奏者が見る、ハードボイルドな日常。東アフリカ,ケニアの文化に飛び込むリアル体験談【リズム音楽世界旅紀行】



 

ライター Zin ” Atrevido” Hitoshi

 

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【LoFi Hiphop BGM】流れるイオタ『黄昏を駆け抜ける』 (Official Album Video) – Driving through the twilight

 

 

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>「心から出て心に還る音楽を」をモットーに、粋な義理人情を大事にし、 旅に似合う音楽を提供し続けていきます。

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