鶴見線全駅
神奈川県横浜市と川崎市をまたがって走る「鶴見線」。
走行するのは東京湾の埋立地・京浜工業地帯。観光地といえる場所はなく、ひたすら工場地帯を駆け抜けていきますが、海の上にホームがある秘境駅や、レトロで味わいのある駅舎が楽しめるスポットがいっぱいです。
☑️駅は13駅のみ
☑️起点の鶴見駅以外は全駅無人駅
観光イベントなんかも実施されており、「鶴見線の電車内で生ビールの飲み放題列車」は、発売開始15分で満席となる人気ぶりとなっています。
鶴見駅までJR品川駅から約17分、JR横浜駅からは10分と、
華やかな都心が近いマイナーローカル路線。行ってみましょう!
これが鶴見線の13駅です
鶴見線は、3つの方向に行く路線に分かれています。
路線によって本数が違いますが、朝方のピークを終えると日中はまったく運行がない支線も!
特に大川駅行きは数が少なく、平日は9本、土曜・休日は3本しか運行しないという激レアぶりです。
本線
番号 | 駅名 |
---|---|
1 | 鶴見駅 |
2 | 国道駅 |
3 | 鶴見小野駅 |
4 | 弁天橋駅 |
5 | 浅野駅 |
6 | 安善駅 |
7 | 武蔵白石駅 |
8 | 浜川崎駅 |
9 | 昭和駅 |
10 | 扇町駅 |
海芝浦支線
番号 | 駅名 |
---|---|
5 | 浅野駅 |
11 | 新芝浦駅 |
12 | 海芝浦駅 |
大川支線
番号 | 駅名 |
---|---|
6 | 安善駅 |
13 | 大川駅 |
鶴見線の歴史と駅名の由来
鶴見線は、首都圏の工業地帯の発展に大きく関わる路線でもあります。
そもそも、鶴見線が走るエリアは埋め立て地で、元々は陸地ではない場所でした。そのエリアを埋め立てたのが、コンクリート王と呼ばれた浅野総一郎です。
東京~横浜間の遠浅な海岸に注目した浅野は、大型船が着岸できる東京湾の建設と 、運河を開削することを決意します。
そして、安田善次郎や渋沢栄一とともに「鶴見埋立組合」を設立。1913年に鶴見周辺の埋め立て工事がスタートし、その15年後の1928年に京浜工業地帯が完成しました。鶴見線の開業は1926年のため、埋め立て工事がスタートして京浜工業地帯が完成する間に一緒に作られています。
参考 : 京浜河川事務所|多摩川先人館|浅野総一郎
浅野総一郎が埋め立てた場所の地名やJR鶴見線の駅名には、ゆかりの人々の名前が残されています。
浅野駅 浅野総一郎
安善駅 安田善次郎(安田財閥の創設者)
白石駅 白石元次郎(総一郎の娘婿で、日本鋼管の初代社長)
大川駅 大川平三郎(日本の近代製紙業の先駆者)
扇町駅 浅野家の家紋である扇
「武蔵」と付く駅名は、すでに同じ地名の駅が存在した場合に、重複を避けるために付けるようだ。
本線の全駅。レトロ駅『国道駅』など。
ではここからは、ゆったりと鶴見線の全駅を巡っていきたいと思います!
2. 国道駅
ホームの階段を下った瞬間から薄暗くなり、まるで映画のセットのようですが、現役のJRの駅です。
昭和の時間を残したまま存在しているかのようなバリバリに割れた窓、戦時下にアメリカ軍から空襲を受けた際の銃弾痕が残っている様子。いきなり凄いです。
ジトッとした雰囲気に見えますが、地元住民の抜け道となっているようで、人通りはそれなりにあります。
国道15号線
外に出ると、第一京浜 国道15号線(かつての明治1号国道)が通っています。
これが「国道駅」の名前の由来です。
国道15号線と反対側は鶴見川。背の高いマンションや一般住宅が数多く並んでいます。
3. 鶴見小野駅
鶴見線がまだ私鉄だった時代に造られた駅舎は、レトロそのもの。
日本で唯一の、アナログレコードプレスメーカー「東洋化成」の工場の最寄り駅です。
構内で互いのホームを行き来することはできないので、向かい側のホームに移動するには踏切を渡ります。
4. 弁天橋駅
人名からの由来が多い鶴見線の駅ですが、こちらの弁天橋は漁師の守護神「弁天神」奉られていたことから付けられたそうです。
改札口からホームまでの間に構内踏切を渡る構造。レトロな駅舎に対して、バリアフリー化されています。
周辺は工場地帯で、目の前にJFEエンジニアリングが見えます。
5. 浅野駅
浅野駅は本線と海芝浦支線の分岐駅。ホームは3つ・4番線まであり配置がユニークです。
猫とスズメに餌をやってるおばあさんがいらっしゃったり、タイムスリップしたかのような独特の雰囲気にクラっときます。
ホームからはめちゃくちゃに鉄塔が見えました!
そして運河と工場と釣り舟、この風景が浅野のシンボルです。
11. 新芝浦駅
工業地帯の細い運河を望む、小さな無人駅。時おり船が至近距離を通過していきます。
東芝の工場と隣接しており、駅舎の目の前が工場のゲートになっています。駅舎のみの撮影だけが許されており、東芝工場にカメラを向けるのは禁止だそうです。
12. 海芝浦駅
鶴見線海芝浦支線の終着駅、海芝浦駅。
この駅はかなり変わっていて、まず外界からのアクセスが不可能とされています。正確には、駅地が東芝京浜事業所の敷地内の一部にあるので、一般人は駅から外に出ることができないのです。
感動のホーム直下が海!!「関東の駅百選」に認定され、鉄道ファンならずとも人気の駅です。
改札の外に出ることはできませんが、ホーム内に「海芝公園」が併設されていて、鶴見つばさ橋を眺める景色もきれいですよ。トワイライトは最高です☆
6. 安善駅
鶴見線の中間地点に当たる安善駅は本線と大川支線の分岐駅。駅名の由来は安田財閥の創始者で、鶴見臨港鉄道を支援した安田善次郎からきているといいます。
かつて臨海部に拠点を構えていた企業が、駅前に社宅を建設したことが発端となり、住宅街となっています。
浅野駅から安善駅間は約700メートルなので、徒歩10分ほど。
多数の貨物側線があり、駅近くには、5本の線路を跨ぐ大規模な踏切があります。
鉄塔!南側には工場や物流倉庫、米軍基地が広がっています。
かつて鶴見線にはもう一つ支線がありました。
安善駅と「浜安善駅」を結んでいた通称、浜安善貨物支線です。
当時の支線用ホームはJR貨物社屋の場所にあった模様です。
13. 大川駅
鶴見線の駅の中で最も到達困難な駅が、大川支線にある大川駅です。
平日は朝のラッシュ時間を越えた9時台から夕方16時台まではまったく電車が走っていない激レア状態!
線路の行き止まりは「最果て」という雰囲気!!
単線の線路には雑草が生い茂っており、駅舎もレトロで、撮影に訪れる鉄道好きの方も多いのだとか!
電車の本数が無い・・・といっても、本線の武蔵白石駅まで徒歩15分なので(工場地帯で9時間途方に暮れることもなく)なんとなく安心です。
大川までの切符を買っていれば武蔵白石駅でも乗降可能です!
7. 武蔵白石駅
さて鶴見線全駅巡りも後半戦。更にディープな最深部を目指します。
武蔵白石駅は、周辺に日本鋳造や富士電機、その他中小工場に囲まれています。
駅名は、日本鋼管(現・JFEスチール)の創立者である白石元次郎の名前から由来しています。
8. 浜川崎駅
浜川崎駅は全国的にも珍しい2つ入り口を持つ駅です。南武線の浜川崎駅と、鶴見線の浜川崎駅は一旦改札を出て道路を隔てて乗り換えます、が!ICカードはタッチしなくて大丈夫という変わったシステム。
頭上には廃止された貨物専用線。
そして海芝浦駅に続いての禁断のスポット。JFEの関係者のみの専用出入り口があります。
駅に直結しているのに、ビジターがJFEを訪れるには、歩いて30分以上もかかる道のりを案内するという徹底ぶりだとか!
南武支線と鶴見線とが合流。ホームからは貨物列車を撮影しているファンが複数いました。
「川崎」の名前がついていますが、川崎駅からは3kmほど離れています。
浜町にあるセメント通りは、川崎コリアタウンの中心地です。
9. 昭和駅
土管の国のような光景が見られる昭和駅。
駅名は元号の昭和ではなく、近くにある「昭和電工」の名前から。開業したのは1931年(昭和6年)で、昭和電工(旧 昭和肥料)へのアクセスや貨物輸送を担う駅ということで名付けられました。
以前の駅舎は私鉄時代のレトロなものでしたが、現在はシンプルな新駅舎になっています。
ちなみに、熊本県には平成駅があり大阪府と長崎県には大正駅があります。
新元号「令和」が発表されましたが、駅名になる日が来るのでしょうか^^
10. 扇町駅
ラストを飾るのは鶴見線本線の終着駅、扇町駅です。
植物園のような佇まい。春〜夏は更に美しいそう。
かつては貨物輸送で賑わっていましたが、現在は猫が主役!
こちらの扇町地区は四方を運河に囲まれていて、化学工場が多く立地しています。
空気が違うのでマスクが必須かもしれません。
線路は行き止まり。
これにて、お疲れ様でした☆
いかがでしたか?ディープなスポットが多く存在する鶴見線。
普段乗ることはない鶴見線ですが、地元の方や仕事で乗られる方の姿がある時間・無い時間でガラッと風景は変わるので、何度訪れても面白いです。
撮影したのはお正月でしたが、タイミングとしてはおすすめかもしれません。
1年目は我らイオタビのライターと、海芝浦支線のみの撮影。
2年目は鉄道好きだった亡き父にズルズルと連れられて本線と大川支線巡り。
人々の顔は硬派な雰囲気で、個人的には(結構お腹いっぱい)ハートの強さは必要かも知れないと思いました。
電車の本数がとーーーっても少ないので、何度かに渡って訪れられるのもいいと思いますし、冒頭でも触れた「鶴見線特別列車」みたいなイベントに参加しちゃうのもアリかと、わたしは思います。
こちらを参考にして、ぜひ鶴見線の旅を楽しんでくださいね。
感動のローカル線巡り、おすすめです!
ビール飲もっ。
【studio iota label】
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