スペインの「ある場所」の写真を見た時から、いつかここへ行くんだろうと導かれていた場所がある。
サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路。
フランス国境の町からピレネー山脈を越え、スペイン北部のサンティアゴに向かう巡礼の道。要するに徒歩によるスペイン横断である。
すべて歩くと800キロメートルの距離で、日数は一日平均30キロ歩いても約一ヶ月かかる。
想像も付かない。本当に自分にできるのか?
怯みそうになる気持ちを奮い立たせながら、今そのスタート地点に立とうとしている。
まだ小学生だった頃から、『冒険家』になりたかった studio iota labelのビビリな冒険家・前田紗希(@nagareruiota)です。
ずっとピアノを弾いてきているので、「音楽と共に冒険する人」になりたいと、卒業文集などで話していました。
齢を重ねて「さぁこれからだ!」と思ったときに、
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飛行機に乗ることができませんでした。
狭い所も、暗い所もダメ。お化けも虫もダメ。高い所も、地下もダメ。
乗り物には弱いし、お腹も壊すし、冷え性で、チビで、声も小さくて、なんだかひょろひょろ、です。
あれ? おかしいな。
そして、ふと、気づいたんです。
わたしが何と思おうと「強靭で」「デカくて」「乗り物にも、酒にも強い」、冒険家みたいな自分は、居ないのだと。
どうするか、
とりあえず調べてみるか(゜∇゜)
ということで、
強くなるぞー!と、近所の多摩川を有酸素運動で自転車をキコキコ漕いで、
雪の日も一日も休まずキコキコし続けて、
ついに飛行機に乗りスペイン巡礼800kmの旅に繰り出しました。努力した自信は人を裏切りません✨
ついにスペイン行きのチケットを買ってしまった。
「もう大丈夫、後には引けないのだ。」
歩きながら生活に必要な荷物を全て背負うので、持ち物は1グラムでも軽量なものを揃える必要があります。
初めて買ったトレッキングシューズに浮かれて、バックパックを背負って、分厚いトレッキング靴下を履き、ドキドキしながら練習しました。
これからは私は歩いてスペインを横断する。
飛行機の克服をするのに4年半。
もうちっとも女子大生といえる年齢じゃなくなっていました。
三度の機内食を1人で食べる程、哀しい事は無い。
東京からモスクワまで11時間。更にモスクワからエアバスに乗って約5時間半。
マドリッドのバラハス空港に到着。
クルクル回っている荷物台で我が荷物を受け取ると、バックパックに穴が空けられているではないか!そしてその穴から中身が見える。おぉ何と言う事・・・
入っていたはずの腕時計や雨具、それからドラムの練習道具が無いのです。
恐ろしきエアロフロート。無事に着陸した時に拍手が起こっていました、どうりで。
格安エアラインも、こうなるとちっとも格安ではありません。
さて、外に出たものの、どっちへ行こうか迷いました。周辺にあるものが、何だかが分からないのです。
公衆電話なのか?キャッシュディスペンサーなのか?
明らかにオロオロしていると、
バックパックを背負い、スーパーのビニール袋に荷物を入れたお兄さんが近づいてきて、スペイン語で話しかけてきてくれました。
(と私は、おぼつかない英語らしきもので答える。)
この時点でお互い、苦笑いの空気が流れる。
バックパッカー先輩は、諦めずに続けてくれます。
マドリッド市内から次の場所に移動するためには欠かせない起点となる駅…
とガイドブックに書いてあった地名を出してくれたので、どうにか聞き取ることが出来ました。
バス乗り場までの道順を教えてくれたのですが、私はスペイン語を理解する事が出来ません。
「ハテナ?」が浮かぶ顔を見かねたのか、
とばかりに、荷物を持って歩き出しました。
風貌は、手に揺れるビニール袋、足下はビーチサンダル。
「もしかしたら騙されるのかも!」という思いが、一瞬アタマをかすめました。
スペインの特に都市部の治安は世界の有名都市の中ではワーストテンに入るほどの悪さだと聞いていたから。
実際にガイドブックには恐ろしい犯罪例が沢山載っています。
でも、付いて行きます。
初めて降り立つヨーロッパにドキドキしながら。
何分か歩くと、難なくバス乗り場に到着。
ここで待ってればいいんだよ!バスが来るかは分からないけどね。
それじゃあ!最後に言わせてよ、ようこそスペインへ!(英語)
「え???」
逆に緊張が抜けてしまいました。
声を張って、ちゃんと届けられたかしら?
チビで、声も小さくて、なんだかひょろひょろな自分でも、ここではそれを知る人なんて誰も居ないんだわ。
辺りはもう真っ暗です。
150km/hくらい出すクレイジーなタクシーに揺られて、その日の宿を目指します。
バスは来なかったから。
スペイン巡礼の、概要。
マドリッドから長距離バスでスペイン北部へ。
横断のスタート地点になる街へと移動します。
各地をスタートして、聖地「サンティアゴ・デ・コンポスティーラ」をゴール地点とするルートが複数あります。
・フランス人の道
・北の道 ←今回これ
・銀の道
・イギリス人の道
・ポルトガルの道
・マドリードの道
どこから入って、どこから出てもOKです。
巡礼の魅力の一つは、アルベルゲ(Albergue)と呼ばれる巡礼者のための宿泊施設に泊まれるところ。
巡礼手帳(スペイン語でクレデンシャル(Credencial))を持っていればアルベルゲに泊まることができます。
巡礼路沿いにあり、看板が出ていますので村に着いたら簡単に見つけられるしくみ。
アルベルゲのある村を目指していく様は ロールプレイングゲーム そのものです。
世界を旅する人って、ある種 超人かなにかのように思ってた。
グッゲンハイム美術館で有名なビルバオの街では、
アルベルゲがあるのは、町外れの坂のだいぶ上のほうでした。
新市街は、例えるなら銀座のような感じで物価が高く、安宿は必然的に町外れになっていくようです。
宿には門限があるので急いで町外れに向かいますが、延々続くつづら折りの坂道の途中で、道に迷ってしまいました。
その場に居合わせた何人かで、道を尋ねながら向かいますが、一向に到着できません。
延々と続く坂道。きつい。
街灯もない町外れ。暗い。
門限に間に合わなかった巡礼者は・・・ねえ野宿なの!?心細い!!
世界を旅する人って、ある種 超人かなにかのように思っていました。
実際は、地味に地図を広げ、困っては助けられ、迷子になりながら進んで行く。
なんだか、おんなじです。
1台のジープパトカーが通りかかり「乗れよ!」との合図。促されるままパトカーに乗車すると、アルベルゲまで送ってもらうことができたのでした。イカしてるな、信じられない。
初めての男女混合30人的ドミトリーで二段ベッドの上下を決め、寝袋にくるまると意外なほど素直に眠る事ができました。
朝、5:30起床。歩き出す。
荷物を抱えてキッチンに行き、スバヤク寝袋を丸めて、分厚いトレッキング用靴下を履きます。
「まだ寝てる人が大勢居るから、荷造りは違う場所でやるんだよ」と、旅の先輩に教えて頂いたことがマナーだそうです。
スペインの北部は海と山に挟まれた自然豊かな土地。
「グリーン・スペイン」などと呼ばれ、むせかえるほどに緑が豊かでした。
6月は1度、7月は2度しか晴れた事が無い天候が、緑を多くするそう。
7月も末になろうとするこの日は、ようやくの曇り空で前日まで1週間ほど雨が続いていて、気温は14度と冷え込みます。
雨が降らない事を祈りつつ、地図を片手に出発します。
華やかな新市街とは変わって、川の左岸側に産業地帯、右岸側に工場労働者の住宅街が立ち並んでいます。
午前中を歩き通し、お昼は道端でサンドイッチを作って食べます。
予めスーパーで購入しておいたパンをナイフで小さく切り、そこにサラミとチーズを挟みます。他にも栄養を取るため果物やナッツなんかも持ち歩いていたりもします。
荷物の全てはとにかく自分で背負って歩ける量!が、鉄則。
徒歩による横断は、欧米人の足の皮がズル剥けになったりと、とにかくめちゃくちゃきつい道のりです。
グラム単位で荷物を軽くしなければ、途端に進んでなど行けなくなって、タオル一枚の”量”に悩むことになります。
新品のトレッキング用靴下を泣く泣く寄付して行く。
水を入れるソフトボトルも使わない。
即席ラーメンを買ったのに幅を取ることに後悔する。
朝そっと置いていこうとすると、親切な誰かが届けに来てくれます。
「あなたのラーメンですよ☆」って。
共に巡礼をする人たちは、さすが親切です。
(誰か食べといてくださいー!)
国立音大⇨世界一周⇨NY
『studio iota label』旅×音楽の8事業の社長・編集長
音楽療法/写真/SEOライター/カフェ
【studio iota label】
【LoFi Hiphop BGM】流れるイオタ『黄昏を駆け抜ける』 (Official Album Video) – Driving through the twilight
日本のレコード会社 studio iota LLC.では音源の企画制作・流通販売、WEBコンテンツの発信、企業のWebライティング、動画BGM製作、アーティストやお店などの写真撮影、作曲・編曲事業、レコーディング・ミックス事業などを行っています。
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